2.4 多変数関数の微分

1 変数関数 $ y=f(x)$ において, $ x=a$ から $ x=a+\Delta x$ への $ y$ の増分は

$\displaystyle \Delta y=f(a+\Delta x)-f(a)$    

である. このとき, $ xy$ 平面内の 2 点 $ (a,f(a))$, $ (a+\Delta x,f(a+\Delta x))$ を 通る直線の傾きは $ \displaystyle{\frac{\Delta y}{\Delta x}}$ となる. $ x=a$ における $ y=f(x)$ の微係数は, 2 点を近づけたときの 傾き $ \displaystyle{\frac{\Delta y}{\Delta x}}$ の極限

$\displaystyle \frac{df(a)}{dx}= \lim_{\Delta x\to 0} \frac{\Delta y}{\Delta x}= \lim_{\Delta x\to 0} \frac{f(a+\Delta x)-f(a)}{\Delta x}$    

である. このとき $ \Delta x\to 0$ は, 右から近づける $ \Delta x\to+0$ と 左から近づける $ \Delta x\to-0$ の両方を 含むことに注意する.

一方,2 変数関数 $ z=f(x,y)$ においては, 定義域 $ D$ 内の点 $ A(a,b)$ から 点 $ P(a+\Delta x,b+\Delta y)$ への $ z$ の増分

$\displaystyle \Delta z=f(a+\Delta x,b+\Delta y)-f(a,b)$    

を考える. このとき $ xyz$ 空間内の 2 点 $ A'(a,b,c)$, $ P'(a+\Delta x,b+\Delta y,z+\Delta z)$$ c=f(a,b)$ とおく)を通る直線の傾きは

$\displaystyle \frac{\Delta z}{\rho}= \frac{f(a+\Delta x,b+\Delta y)-f(a,b)}{\sqrt{\Delta x^2+\Delta y^2}}$    

となる. ただし,$ \rho$ は点 $ A$, $ P$ 間の 距離 $ \rho=\sqrt{\Delta x^2+\Delta y^2}$ である. 点 $ P$ を点 $ A$ に近づけたときの 傾き $ \displaystyle{\frac{\Delta z}{\rho}}$ の極限を考える. 点 $ P$ を点 $ A$ へ近づけるとき, 近づける方向は $ x$ 軸や $ y$ 軸に沿った方向だけでなく, 全方向から近づけなければならない.
(i).
全方向 $ (\Delta x,\Delta y)\to(0,0)$ から近づけたとき, 傾き $ \displaystyle{\frac{\Delta z}{\rho}}$ の極限が 存在すれば,$ z$全微分可能であるという.
(ii).
$ x$ 軸に沿って $ \Delta y=0$, $ \Delta x\to 0$ $ \rho=\vert\Delta x\vert\to 0$)と近づけたとき, 傾きの極限

$\displaystyle \lim_{\rho\to0} \frac{\Delta z}{\rho}= \lim_{\vert\Delta x\vert\t...
...lta x\vert}= \pm \lim_{\Delta x\to\pm0} \frac{f(a+\Delta x,b)-f(a,b)}{\Delta x}$    

が存在すれば, $ z$$ x$ に関して偏微分可能であるという.
(iii).
$ y$ 軸に沿って $ \Delta x=0$, $ \Delta y\to 0$ $ \rho=\vert\Delta y\vert\to 0$)と近づけたとき, 傾きの極限

$\displaystyle \lim_{\rho\to0} \frac{\Delta z}{\rho}= \lim_{\vert\Delta y\vert\t...
...lta y\vert}= \pm \lim_{\Delta y\to\pm0} \frac{f(a,b+\Delta y)-f(a,b)}{\Delta y}$    

が存在すれば, $ z$$ y$ に関して偏微分可能であるという.

Kondo Koichi
平成18年1月18日