例 5.20 (多項式の空間における固有値問題の具体例)
線形変換
![$ F:\mathbb{R}[x]_2\to\mathbb{R}[x]_2$](img1998.png)
;
の固有値,固有空間を求める.
まず,線形変換
の表現行列
を求める.
基底
のもとで
多項式
,
の座標を
,
として表すと,
と書ける.
このとき,

を

で写すと
となる.
ここで
であるから,代入すると
☆ |
|
が得られる.

が

の基底

に関する表現行列である.
また,この結果は
としても得られる.
(▲)と(☆)より,
線形変換

は
により定義される線形変換

と等価である.
次に
の固有値を求める.
に関する固有方程式は
である.
(☆)と(△)を用いると
と表されるので,
固有方程式は
と等価である.
つまり行列

に関する固有値問題を解けばよい.

の固有多項式

と

の固有多項式

は等しく,
となる.

より固有値は

である.
の固有空間を求める.
固有方程式(◎)より
の固有ベクトル
を定め,
その後(△)に代入し
の固有ベクトル
を定めればよい.
のとき,
となるので,

,

より,

の

に関する固有ベクトルは
と得られる.
よって

の

に関する固有空間は
となる.

のとき,
となるので,

,

より,

の

に関する固有ベクトルは
と得られる.
よって

の

に関する固有空間は
となる.

のとき,
となるので,

,

より,

の

に関する固有ベクトルは
と得られる.
よって

の

に関する固有空間は
となる.
固有空間
,
,
のそれぞれの基底は
,
,
である.
これらは
* |
|
と表される.

より

は
1 次独立となる.
よって,
となり,
が成り立つ.
![$ \mathbb{R}[x]_2$](img410.png)
は

,

,

に直和分解される.

は
![$ \mathbb{R}[x]_2$](img410.png)
の基底となる.
線形変換
の基底
における
表現行列は
である.
基底
における
の表現行列を求める.
基底
における
の座標を
とすると,
基底変換(*)を用いて,
と表される.

は

から

への座標変換である.

の

における座標を

とすると,
同様にして

が成り立つ.
線形変換

は線形変換

と等価であるから,

に座標変換

,

を代入して
を得る.
基底

に関する

の表現行列は
となる.