4.9 線形写像の階数と退化次数
定義 4.44 (階数,退化次数) 線形写像 の像 の次元を階数(rank)といい,
と表記する. また,核 の次元を 退化次数(nullity)といい,
と表記する.
定理 4.45 (退化次数,階数) 線形写像 の階数は
である.また, の退化次数は
である.
(証明) まず の核は定義より
である. これは方程式 の解空間である. 方程式 の 一般解の任意定数の個数 が 解空間の次元と等しいので,
が成り立つ. 次に の像は定義より
である. の任意の元は
と表される. つまり の集合はベクトル で 張られる部分空間
となる. 部分空間の基底の個数は 1 次独立なベクトルの最大個数となるから,
が成り立つ.
注意 4.46 (退化次数,階数) 線形写像 に対して
が成り立つことに注意する.
定理 4.47 (退化次数,階数) 線形写像 に関して
が成立する.
(証明) の基底を , , とし, の基底を , , とする. また, のベクトル が
をみたすとする. このとき 1 次関係
に対して を作用させると
となる. , , は 1 次独立なので となる. このとき
であり,, , は 1 次独立であるか となる. よって , , , , , は 1 次独立である. 次に, の任意のベクトル を で写された ベクトル は のベクトルであるから,
と書ける. これより
が成り立つ. ベクトル は に含まれる.よって
と書けるので,
を得る. , は任意であるから,
となる. 以上より, 個のベクトル , , , が の基底となる, よって , , を得る.
例 4.48 (線形写像の像と核の具体例) 線形写像
の像 ,核 と それらの次元である階数 , 退化次数 を求める.まず を簡約化すると
となる. このとき , は 1 次独立であり,その他のベクトルは
と表される. 同じ 1 次関係が に対しても成り立つので, , は 1 次独立であり, その他のベクトルは
☆
となる. また,方程式 の解は
★
と表される.の核 は方程式 の 解(★)の集合であるから,
となる. は 1 次独立であり, の基底となる. よって退化次数は
と得られる.の像 の元 は 任意のベクトル に対して,
により定まる. (☆)を用いると
と表される.ここで , は任意の実数であるから,
が成り立つ. は 1 次独立であり, の基底となる.よって
を得る.
Kondo Koichi
平成18年1月17日