3.20 線積分と多重積分
注意 3.92 (周回積分) 積分路 が一周しているとき, 線積分 を
と表記することがある. これを周回積分とも呼ぶ.
定義 3.93 (領域の境界) 領域 の境界を と表記する. このとき内部が進行方向の左手になるように向きを定める. (注意)ここで は偏微分の記号とは全く関係ない. 単に記号の形が「ぐるっとまわる」の見えるため.
定理 3.94 (グリーンの定理) 領域 内で関数 が連続なとき,
が成り立つ.
(証明) が に関して単純な領域
であるとき,
が成り立つ. 任意に与えられた領域を に関して単純な領域として分割し, 積分を求める.このとき重なり合う境界は向きが異なるので, 積分値は符号が反転し相殺しあう. よって,任意の領域に対しても上式が成立する. 同様にして が に関して単純な領域であるとすると
が成り立つ.これらを合わせてグリーンの定理を得る.
注意 3.95 (グリーンの定理) グリーンの定理は線積分と多重積分の移り合いを表す.
例 3.96 (グリーンの定理の使用例) を半径 の円上を 1 周する有向曲線
とする. このとき の内部の領域は
である. 領域 において関数 , は連続であるから, 線積分
はグリーンの定理が適用でき,
と計算される.
例 3.97 (グリーンの定理が使用不可な例) 線積分
を考える. は単位円上を 1 周する有向曲線であり, の内部の領域は
である. 関数
は原点で連続ではないので, 領域 のすべての点において 関数 , は連続ではないからグリーンの定理は適用できない.誤りではあるが, グリーンの定理を適用して計算すると,
より,
となる. 正しくは,
と得られる.
Kondo Koichi
平成19年1月23日