実行列
が複素固有値
を
もつとき,その複素共役
も固有値となる.
なぜなら,固有多項式
は実係数であるから,
のとき
が成り立つからである.
固有値
に属する固有ベクトルを
とすると
である.
複素共役をとると
となるので,
に属する固有値ベクトルは
となる.
よって
である.
これより
が成り立つ.
複素数
の実部を
,
虚部を
とおき,
ベクトル
の各要素の実部,虚部をとる操作を
,
とおく.
このとき
を得る.
の場合では,
が成り立つ.
,
が 1 次独立のとき
は正則となるから,
と表される.
定理 5.76 (実標準形)
実行列
![$ A\in\mathbb{R}^{n\times n}$](img278.png)
は
複素数体上で対角化可能であるとする.
固有値を
とし,それに属する固有ベクトルを
![$ \vec{p}_1,\cdots,\vec{p}_n$](img3214.png)
とする.
このとき,行列
![$ A$](img265.png)
は
と実数体上でブロック対角化される.
![$ D$](img3041.png)
を
実標準形(real canonical form???)という.
例 5.77 (実標準形の具体例)
行列
の固有多項式は
であるから,
固有値は
![$ g_A(\lambda)=0$](img2838.png)
より,
と複素数になる.
それぞれの固有ベクトルは
より,
となる.
よって
![$ A$](img265.png)
を複素数体上で対角化すると
を得る.
次に
![$ A$](img265.png)
を実数体上で実標準形に分解する.
![$ \lambda_2=\overline{\lambda_1}$](img3387.png)
,
![$ \vec{p}_2=\overline{\vec{v}_1}$](img3388.png)
となることに注意すると
を得る.
行列
![$ A=D$](img3391.png)
,
![$ E=P$](img3392.png)
となることから,
![$ A$](img265.png)
は既に実標準形のかたちをしている.
Kondo Koichi
KONDO Koichi
平成19年1月25日