次元のベクトル空間
と
次元のベクトル空間
において,
基底をそれぞれ
,
とすると,
,
の任意のベクトルはそれぞれ
と表される.
このとき,
線形写像
;
は
となる.
ベクトル
,
,
,
は
のベクトルであるから,
基底
を用いて
と表されるので
★ |
|
と書ける.
以上より(▲), (☆), (★)より
を得る.
は
1 次独立であるから
♭ |
|
が成り立つ.
線形写像
により
線形写像
が定まる.
注意 4.26 (一般のベクトル空間における線形写像)
一般のベクトル空間における線形写像

と
数ベクトル空間における線形写像

とを
次のように同一視する:
定義 4.27 (線形写像の表現行列)
ベクトル空間

の基底を

とし,
ベクトル空間

の基底を

とする.
このとき,
線形写像

が
をみたすとき,
行列

を

の基底

と

の基底

に関する
表現行列という.
定理 4.28 (線形写像の行列表示)
線形写像

において,
ベクトル空間

の基底が

であり,
その基底における座標を

とし,
ベクトル空間

の基底が

であり,
その基底における座標を

とする.
このとき,
行列

が

の表現行列であることと,
が成り立つこととは,必要十分条件である.
注意 4.29 (表現行列)

,

とし,

の基底を標準基底

とし,

の基底を標準基底

とする.
このとき

,

となるから,
(♭)は

となる.
よって,
本節の表現行列の定義により定まる

と
前節の表現行列の定義により定まる

とは,
この条件のもとで一致する.
注意 4.30 (表現行列)
線形写像

の標準基底に
おける表現行列は

である.
定理 4.31 (基底を取り換えたときの表現行列)
線形写像

において

の基底

,

,

,

と

の基底

,

,

,

に
関する表現行列を

とする.
すなわち,
とする.

の基底

,

,

,

と

の基底

,

,

,

に
関する表現行列を

とする.
すなわち,
とする.
このとき
が成り立つ.
ここで

,

は基底の変換行列であり,
である.
(証明)
まず,
が成り立つ.また,
となる.よって,

であり
が成り立つ.
定理 4.32 (線形変換の表現行列の基底の取り替え)
ベクトル空間

の基底

,

,

における
線形変換

の表現行列を

とし,
基底

における

の表現行列を

とする.
また,基底

から
基底

への
基底の変換行列を

とする.
このとき
が成り立つ.
(証明)
まず,表現行列
,
は定義より
をみたす.基底の変換行列

は
をみたす.
このとき
が成り立つので

となる.
よって

を得る.
例 4.33 (表現行列の基底の取り替えの具体例)
線形変換
![$ F:\mathbb{R}[x]_2\to\mathbb{R}[x]_2$](img2091.png)
;
☆ |
|
の表現行列を求める.
![$ \mathbb{R}[x]_2$](img410.png)
の基底を

とし,
多項式

,

を表すと
となる.
このとき(☆)より
となる.
ここで,

,

,

を(☆)に代入すると
それぞれ

,

,

となるので,
を得る.

は基底

に関する

の表現行列である.
これを代入すると
♭ |
|
となる.
(▲)と比較すると

が成立する.
よって,線形変換

は
と行列表示で書かれた線形変換

と等価である.
次に基底
に関する
表現行列
を求める.
すなわち,
は
をみたす.
基底

から

への
変換行列

は
により与えられる.
このとき,多項式

,

は
となる.
(△), (▲)と(□), (■)とを比較すると
を得る.
これは基底

における
座標

と
基底

における
座標

との座標変換を表す.
(♭), (□), (■)より
となるので,

となり,
を得る.
以上より基底

に関する

の表現行列

は
と得られる.
よって,基底

に関する線形変換

の行列表示は
となる.
Kondo Koichi
KONDO Koichi
平成19年1月25日