2.2 極限
定義 2.8 (極限) 関数 において, 定義域内の点 を点 に近づけるとする. ただし とする. このとき, 近づけ方に依らず が同じ 1 つの値 に近づくならば, は極限(limit) が存在する, または, は に収束する(convergent) といい,
と表記する.
注意 2.9 (極限) とは限らない.
注意 2.10 (極限) 近づけ方によって, の値が異なるときは,極限が存在しない.
例 2.11 (極限) 関数
の原点 への極限を考える. であることに注意する.(a) 軸( の直線)に沿って近づける場合. を代入した後に の極限を考える. このとき,
が成り立つ.(b) 軸( の直線)に沿って近づける場合. を代入した後に の極限を考える. このとき,
が成り立つ.(c) 直線 に沿って近づける場合. ただし, は任意の実数とする. を代入した後に の極限を考える. このとき,
が成り立つ.(a), (b), (c)より, 近づけ方が異なれば が近づく値も変わるので, 極限 は存在しない.
例 2.12 (極限) 関数
の原点 への極限を考える. であることに注意する. (a) 軸( の直線)に沿って近づける場合. を代入した後に の極限を考える. このとき,
が成り立つ. (b) 直線 に沿って近づける場合. ただし, は の任意の実数とする. を代入した後に の極限を考える. このとき,
が成り立つ. ここで, とおいた. (a), (b), より, 全方向から近づけたとき同じ値 に収束するので, 極限
が存在する.
例 2.13 (極限) 関数
の原点 への極限を考える. 全方向から近づけるために,
とおき, の極限を考える. ただし, は の 任意の実数とする. このとき,
となり, 極限
が存在する.
例 2.14 (極限) 関数 を考える. この関数の定義域は一見すると と見える. しかし, のときを考えると,
となる.よって,この関数は正しくは,
となる.ただし, である. 定義域は 平面全体となる. 原点への極限は が領域 の中にないときは,
と極限が存在する. しかし, に対して常に であり, 原点の近傍でもこれが成り立つ. よって,原点への極限は存在しない.
平成21年12月2日