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? 2.1 (任意定数を含む解って何?)
方程式

の解を考えよう.
この方程式の解はどのように表現したらよいだろうか.
まずは具体的にいくつか解を書き下してみよう.
解は方程式に代入して成り立てばよいから,
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(179) |
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は解となるのがすぐ分かる.
この解から

は任意の値で良さそうである.
これを

としよう.

とおけば

である.
よって解として
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(184) |
を得る.確にこれが解となっているかは,
方程式

に代入すればよい.
この解は任意定数を含む解である.
変数の個数は

個であり,
方程式の本数が

本であるので,
任意定数の個数は

個となる.
次に方程式
![$\displaystyle \left\{\begin{array}{l} x_{1}+x_{2}=0 \\ [.5ex] x_{3}+x_{4}=0 \end{array}\right.$](img371.png) |
(185) |
を考えよう.第一式は先ほどの方程式と同じである.
であるから第一式を満たす解として

を得る.
第二式も第一式と同じ形をしており,
変数名が違うだけである.
よって解は

である.
しかし第一式と第二式とは独立しているので,
任意定数も独立してとりうる.
これを

,

としよう.
よって解として
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(186) |
を得る.
変数が

個,方程式が

本,
任意定数が

個である.
? 2.2 (簡約化って何?)
方程式
![$\displaystyle \left\{\begin{array}{ccccc} x_{1} & +x_{2} & +x_{3} & +x_{4} & =0 \\ [.5ex] & & x_{3} & +x_{4} & =0 \end{array}\right.$](img379.png) |
(187) |
を考えよう.第一式から第二式を引くと,
![$\displaystyle \left\{\begin{array}{ccccc} x_{1} & +x_{2} & & & =0 \\ [.5ex] & & x_{3} & +x_{4} & =0 \end{array}\right.$](img380.png) |
(188) |
を得る.
第一式から変数が

個減っている.
このとき係数行列は
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(189) |
のように変形される.
右の行列は簡約な行列となっている.
次に方程式
![$\displaystyle \left\{\begin{array}{ccc} 3x_{1} & +\,4x_{2} & =2 \\ [.5ex] x_{1} & +\,2x_{2} & =3 \end{array}\right.$](img382.png) |
(190) |
を考えよう.
方程式と係数行列の変化をみよう:
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![$\displaystyle \left\{\begin{array}{ccc} 3x_{1} & +\,4x_{2} & =2 \\ [.5ex] x_{1}...
...\qquad \left[\begin{array}{cc\vert c} 3 & 4 & 2 \\ 1 & 2 & 3 \end{array}\right]$](img383.png) |
(191) |
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![$\displaystyle \to \left\{\begin{array}{ccc} 0 & -\,2x_{2} & =-7 \\ [.5ex] x_{1}...
... \to \left[\begin{array}{cc\vert c} 0 & -2 & -7 \\ 1 & 2 & 3 \end{array}\right]$](img384.png) |
(192) |
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![$\displaystyle \to \left\{\begin{array}{ccc} x_{1} & +\,2x_{2} & =3 \\ [.5ex] & ...
... \to \left[\begin{array}{cc\vert c} 1 & 2 & 3 \\ 0 & -2 & -7 \end{array}\right]$](img385.png) |
(193) |
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![$\displaystyle \to \left\{\begin{array}{ccc} x_{1} & 0 & =-4 \\ [.5ex] & -2x_{2}...
...\to \left[\begin{array}{cc\vert c} 1 & 0 & -4 \\ 0 & -2 & -7 \end{array}\right]$](img386.png) |
(194) |
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![$\displaystyle \to \left\{\begin{array}{ccc} x_{1} & & =-4 \\ [.5ex] & x_{2} & =...
...\to \left[\begin{array}{cc\vert c} 1 & 0 & -4 \\ 0 & 1 & 7/2 \end{array}\right]$](img387.png) |
(195) |
このように基本変形により変数が減って行く.
この手順によりうまく変数を減らすことができる.
ある行列が与えられたとき,
その行列に対して簡約な行列は一意に定まる.
つまり与えられた方程式に対して常に
うまい変数の減らし方が存在することを意味する.
? 2.3 (ランクっ何?)
方程式
![$\displaystyle \left\{\begin{array}{ccccc} x_{1} & +\,x_{2} & +\,x_{3} & +\,x_{4...
... & =0 \\ [.5ex] 2x_{1} &+\,2x_{2} & +\,3x_{3}& +\,3x_{4}& =0 \end{array}\right.$](img388.png) |
(196) |
を考えよう.
変数が

個,方程式が

本であるから
任意定数は

個であろう.
しかし本当にそうであろうか.
まずは方程式に基本変形をほどこしてみよう:
このように方程式は本質的に

本である.
よって変数が

個,方程式が

本,
任意定数が

個となる.
これを係数行列でみてみよう:
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(200) |
最後の簡約化された行列に着目する.
行列のランクは

である.
つまり係数行列のランクは,
方程式は本質的には何本であるかを示している.
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Kondo Koichi
Created at 2002/07/22