定義 3.43 (1 次結合,1 次従属)
ベクトル

に対して,
ベクトル
を

の
1 次結合または
線形結合(linear combination)
という.
またこのとき,
ベクトル

は

に
1 次従属または
線形従属(linearly dependent)
であるという.
定義 3.44 (1 次関係,1 次独立,1 次従属)
ベクトル

に対して,
条件式
を

の
1 次関係または
線形関係という.
1 次関係をみたす係数が
のみであるとき,
は
1 次独立または線形独立(linearly independent)
という.
が
1 次独立ではないとき,
1 次従属または線形従属という.
注意 3.45 (自明な 1 次関係)
任意のベクトル

の
1 次関係
において
とおくと,明らかに 1 次関係は成立する.
これを
自明な 1 次関係という.
成立するのが自明な 1 次関係のみのときベクトルは 1 次独立である.
また,
自明な 1 次関係ではないとき
非自明な 1 次関係という.
非自明な 1 次関係のときベクトルは 1 次従属である.
非自明な場合は例えば
等々がある.
例 3.46 (ベクトルの 1 次独立,1 次従属の具体例)
ベクトル

を考える.

,

が同じ向きのときを考える.
向きが同じなので

と書ける.また,
となので,非自明な 1 次関係である.
よって

は 1 次従属である.
例 3.47 (ベクトルの 1 次独立,1 次従属の具体例)
ベクトル

を考える.

,

の向きが異なるときを考える.
このとき 1 次関係
は自明なもののみである.
もし非自明であれば

と

とが同時には
成立しないので,

とおく.
このとき
と表される.

と

とは同じ向きとなる.
これは与えられた条件と矛盾する.
よって 1 次関係は自明なものに限る.

,

は 1 次独立である.
例 3.48 (ベクトルの 1 次独立,1 次従属の具体例)
ベクトル

を考える.

となるときを考える.
条件を書き換えると
となる.非自明な 1 次関係であるから,

は 1 次従属である.
例 3.49 (基本ベクトルの 1 次独立性)
基本ベクトル

は
1 次独立である.
なぜなら, 1 次関係は
となるので,係数は自明
なものに限るからである.
例 3.50 (1 次独立の具体例)
![$ \mathbb{R}[x]_n$](img373.png)
のベクトル

は
1 次独立なベクトルである.
(証明)
1 次関係
より

を定める.

とおくと

が定まる.
1 次関係を微分すると
となる.

とおくと

が定まる.
同様にして
を得る.
自明な係数のみであるから,
よって 1 次独立である.
例 3.51 (1 次独立の具体例)

のベクトル
は 1 次独立であるか考える.
これらの 1 次関係
をみたす

,

,

を定める.
1 次関係を変形して
であり,
となり,
と表される.
行列

を簡約化すると
である.よって
を得る.
係数は自明なもの
に限るので,

は 1 次独立である.
例 3.52 (1 次従属の具体例)

のベクトル
は 1 次独立であるか考える.
1 次関係より,
となる.
簡約化すると
であるから,
を得る.
1 次関係は
となる.非自明な 1 次関係であるから,

は 1 次従属である.
Kondo Koichi
平成18年1月17日