定理 3.77 (ベクトルの 1 次独立な最大個数)
ベトクルの集合
![$ \{\vec{u}_1$](img929.png)
,
![$ \vec{u}_2$](img729.png)
,
![$ \cdots$](img722.png)
,
![$ \vec{u}_m\}$](img930.png)
の 1 次独立なベクトルの最大個数が
![$ r$](img717.png)
であることの必用十分条件は,
![$ \vec{u}_1$](img728.png)
,
![$ \cdots$](img722.png)
,
![$ \vec{u}_m$](img730.png)
のなかに
![$ r$](img717.png)
個の 1 次独立な
ベクトルがあり,
他の
![$ m-r$](img950.png)
個のベクトルはこの
![$ r$](img717.png)
個のベクトルの 1 次結合で
表されることである.
(証明)
(必用条件)
,
,
のうち
1 次独立な
個のベクトルを
,
,
とする.
このとき
,
,
,
(
) は 1 次従属であるから,
は
,
,
の 1 次結合で表される.
(十分条件)
個のベクトル
,
,
が 1 次独立であるとする.
,
,
の
1 次独立なベクトルの最大個数は
以上となる.
また,
他の
個のベクトル
,
,
が
,
,
の 1 次結合で表されるとする.
このとき,
と表されるから,
![$ \{\vec{u}_1$](img929.png)
,
![$ \cdots$](img722.png)
,
![$ \vec{u}_m\}$](img930.png)
の
1 次独立なベクトルの最大個数は
![$ \{\vec{u}_1$](img929.png)
,
![$ \cdots$](img722.png)
,
![$ \vec{u}_r\}$](img954.png)
の
1 次独立なベクトルの最大個数
![$ r$](img717.png)
以下となる.
よって
![$ \{\vec{u}_1$](img929.png)
,
![$ \cdots$](img722.png)
,
![$ \vec{u}_m\}$](img930.png)
の
1 次独立なベクトルの最大個数は
![$ r$](img717.png)
である.
例 3.78 (ベクトルの 1 次独立な最大個数の具体例)
ベクトル
の 1 次独立なベクトルの最大個数と
そのときベクトルの組の一つを求める.
また,その他のベクトルを 1 次独立なベクトルの 1 次結合で表す.
まず,
ベクトル
の 1 次関係
を考える.これは
と表される.
方程式
![$ A\vec{x}=\vec{0}$](img508.png)
の解を求めることで,
1 次関係の係数
![$ \vec{c}$](img695.png)
が定まる.
行列
![$ A$](img265.png)
を簡約化すると
となる.
方程式
![$ B\vec{x}=\vec{0}$](img960.png)
の解と
方程式
![$ A\vec{x}=\vec{0}$](img508.png)
の解とは等しく
![$ \vec{c}$](img695.png)
であるから,
ベクトル
![$ \vec{b}_1,\vec{b}_2,\cdots,\vec{b}_5$](img961.png)
の 1 次関係と
ベクトル
![$ \vec{a}_1,\vec{a}_2,\cdots,\vec{a}_5$](img956.png)
の 1 次関係は等しい.
まず,
の
1 次独立なベクトルの最大個数を考える.
に着目すると,
であり,
![$ \mathbb{R}^4$](img684.png)
の基本ベクトルである.
明らかに
ベクトルの組
![$ \{\vec{b}_1,\vec{b}_2,\vec{b}_4\}$](img964.png)
は 1 次独立であるので,
1 次独立なベクトルの最大個数は
![$ 3$](img965.png)
以上である.
他のベクトル
![$ \vec{b}_3,\vec{b}_5$](img966.png)
について見ると
|
○![$\displaystyle )\quad \vec{b}_3= \begin{bmatrix}-1 \\ 2 \\ 0 \\ 0 \end{bmatrix} ...
...\end{bmatrix} = 2\vec{e}_1-\vec{e}_2+\vec{e}_3 = 2\vec{b}_1-\vec{b}_2+\vec{b}_4$](img967.png) |
|
が成り立つ.
![$ \vec{b}_3,\vec{b}_5$](img966.png)
はそれぞれ
![$ \vec{b}_1,\vec{b}_2,\vec{b}_4$](img962.png)
に
関して 1 次従属である.
個以上のベクトルの組が 1 次従属となることを示す.
(その 1)
まず,
個の
ベクトルの組
,
,
,
,
に関する 1 次関係は(○)を用いると
となる.
この方程式の係数行列は
![$ B$](img267.png)
そのものであるから,
階数は
![$ 3$](img965.png)
であり非自明な係数をもつ.
よって
![$ \{\vec{b}_1$](img969.png)
,
![$ \vec{b}_2$](img970.png)
,
![$ \vec{b}_3$](img971.png)
,
![$ \vec{b}_4$](img972.png)
,
![$ \vec{b}_5\}$](img973.png)
は
1 次従属となる.
次に
![$ 4$](img968.png)
個のベクトルの組が 1 次従属となることを示す.
![$ \{\vec{b}_2,\vec{b}_3,\vec{b}_4,\vec{b}_5\}$](img977.png)
,
![$ \{\vec{b}_1,\vec{b}_3,\vec{b}_4,\vec{b}_5\}$](img978.png)
,
![$ \{\vec{b}_1,\vec{b}_2,\vec{b}_4,\vec{b}_5\}$](img979.png)
,
![$ \{\vec{b}_1,\vec{b}_2,\vec{b}_3,\vec{b}_5\}$](img980.png)
,
![$ \{\vec{b}_1,\vec{b}_2,\vec{b}_3,\vec{b}_4\}$](img981.png)
の
1 次関係は同様の操作で,
とそれぞれなる.
これらの方程式の係数行列はそれぞれ
行列
![$ B$](img267.png)
の第
![$ 1$](img76.png)
,
![$ 2$](img169.png)
,
![$ 3$](img965.png)
,
![$ 4$](img968.png)
,
![$ 5$](img481.png)
列目を除いた形をしている.
係数行列の階数はいずれも
![$ 3$](img965.png)
以下であるから,
非自明な 1 次関係が存在する.
![$ 4$](img968.png)
個のベクトルの組はいずれも 1 次従属となる.
(その 2)
また別の方法としては次のように示す.
方程式
![$ B\vec{c}=\vec{0}$](img988.png)
の解は,
任意定数を
![$ \alpha$](img359.png)
,
![$ \beta$](img989.png)
とすると
|
☆![$\displaystyle )\qquad (\alpha-2\beta)\vec{b}_1+(-2\alpha+\beta)\vec{b}_2+ \alpha\vec{b}_3-\beta\vec{b}_4+\beta\vec{b}_5= \vec{0}$](img990.png) |
|
と表される.
![$ 5$](img481.png)
個のベクトルの組
![$ \{\vec{b}_1,\vec{b}_2,\vec{b}_3,\vec{b}_4,\vec{b}_5\}$](img991.png)
の 1 次関係は(☆)である.
非自明な 1 次関係であるから
![$ \{\vec{b}_1,\vec{b}_2,\vec{b}_3,\vec{b}_4,\vec{b}_5\}$](img991.png)
は
1 次従属となる.
また,(○)より
と非自明な 1 次関係が成り立つので,
ベクトルの組
![$ \{\vec{b}_1,\vec{b}_2,\vec{b}_3,\vec{b}_4\}$](img981.png)
,
![$ \{\vec{b}_1,\vec{b}_2,\vec{b}_4,\vec{b}_5\}$](img979.png)
は 1 次従属となる.
さらには(☆)において,
![$ \alpha=2\beta$](img993.png)
,
![$ \beta=2\alpha$](img994.png)
,
![$ \beta=0$](img505.png)
とおくと,
それぞれ
と非自明な 1 次関係が成り立つので,
![$ \{\vec{b}_2,\vec{b}_3,\vec{b}_4,\vec{b}_5\}$](img977.png)
,
![$ \{\vec{b}_1,\vec{b}_3,\vec{b}_4,\vec{b}_5\}$](img978.png)
,
![$ \{\vec{b}_1,\vec{b}_2,\vec{b}_3,\vec{b}_5\}$](img980.png)
は
1 次従属となる.
以上より,ベクトルの組
の
1 次独立なベクトルの最大個数は
である.
これらの結果は
ベクトル
の
1 次関係にも適用される.
1 次独立なベクトルの最大個数は
であり,
その 1 次独立となるベクトルの組のひとつは
である.
また,その他のベクトルはこれらの 1 次結合
として表される.