2.37 接線

注意 2.160 (曲線の法線ベクトル)   $ xy$ 平面内の曲線 $ F(x,y)=0$ 上の点を パラメータ表示し, $ (x(t),y(t))$ とおく. このとき,曲線上の 2 点 $ P(x(t),y(t))$, $ Q(x(t+\Delta t),y(t+\Delta t))$$ \Delta t$ が十分小さいときテイラー展開して

$\displaystyle \overrightarrow{PQ}=\vec{x}(t+\Delta)-\vec{x}(t)= \vec{x}'(t)\Delta t+O(\Delta t^2)$    

と表される. $ \Delta t\to 0$ のとき, ベクトル $ \overrightarrow{PQ}$ の向きと 接線の方向ベクトル $ \vec{p}$ の向きは等しくなる. よって, 接線の方向ベクトルは $ \vec{p}=\vec{x}'(t)$ である. 一方, $ F(x(t),y(t))=0$ の両辺を $ t$ で微分すると

$\displaystyle F_x(x,y)x'(t)+F_y(x,y)y'(t)=0$    

となる.ベクトルで表すと

$\displaystyle \nabla F(x,y)\cdot \vec{x}'(t)=0$    

となる.$ \nabla F$ $ \vec{x}'(t)$ と直交する. よって,接線の法線ベクトルは $ \vec{n}=\nabla F(x,y)$ である.

定理 2.161 (接線)   曲線 $ F(x,y)=0$ の点 $ (a,b)$ における 接線の方程式

$\displaystyle F_x(a,b)(x-a)+ F_y(a,b)(y-b)=0$    

で与えられる.ベクトルで表記すると

$\displaystyle \nabla F(\vec{a})\cdot (\vec{x}-\vec{a})=0$    

となる.


(証明)     接線は点 $ (a,b)$ を通り, 法線ベクトルが $ \nabla F(a,b)$ の直線であるので, $ \nabla F(\vec{a})\cdot (\vec{x}-\vec{a})=0$ を得る. または,次のようにも示される. 条件 $ F(x,y)=0$ により定義される陰関数 $ y=f(x)$ を考える. このとき $ y$ の導関数は

$\displaystyle y'=f'(x)=-\frac{F_{x}(x,y)}{F_{y}(x,y)}$    

である.$ y=f(x)$$ x=a$ における接線の方程式は

$\displaystyle y=f(a)+f'(a)(x-a)= f(a)-\frac{F_{x}(a,b)}{F_{y}(a,a)}(x-a) \quad\Rightarrow\quad F_x(a,b)(x-a)+ F_y(a,b)(y-b)=0$    

と表される.ただし,$ b=f(a)$ とおく.

2.162 (接線の方程式)   円 $ F=x^2+y^2-1=0$ の点 $ (x_0,y_0)$ における 接線の方程式を求める. 接線の法線ベクトルは

$\displaystyle F_x=2x,\quad F_y=2y$    

を用いて $ \nabla F$ であり, 点 $ (x_0,y_0)$ を通る直線であるから,

$\displaystyle 2x_0(x-x_0)+2y_0(y-y_0)=0 \quad\Rightarrow\quad x_0x+y_0y-(x_0{}^2+y_0{}^2)=0 \quad\Rightarrow\quad x_0x+y_0y=1$    

を得る.

2.163 (接線の方程式)   曲線 $ F=x^3+3xy+4xy^2+y^2+y-2=0$ の点 $ (1,-1)$ における 接線の方程式を求める.

$\displaystyle F_x=3x^2+3y+4y^2, \quad F_y=3x+8xy+2y+1, F_x(1,-1)=4, \quad F_y(1,-1)=-6$    

より,接線は

$\displaystyle F_x(1,-1)(x-1)+F_y(1,-1)(y+1)=0 \quad\Rightarrow\quad 2x-3y-5=0$    

と得られる.方程式を書き直して

$\displaystyle y=\frac{2}{3}x-\frac{5}{3}$    

とする. 接線の傾きは $ \frac{2}{3}$$ y$ 切片は $ -\frac{5}{3}$ である.

$\displaystyle \frac{x}{\frac{5}{2}}+\frac{y}{\frac{-5}{3}}=1$    

と書き直す. 接線の $ x$ 切片は $ \frac{5}{2}$$ y$ 切片は $ -\frac{5}{3}$ である.


平成20年2月2日