2.42 極値
定義 2.187 (極値) 関数 が, 点 とその任意の近傍の点 に対して
をみたすとき, は点 で 極大値 をとるという. また,
をみたすとき, は点 で 極小値 をとるという. 極大値,極小値を総称して極値という.
定理 2.188 (極値の必用条件) 関数 が点 で極値をとるとき,
が成り立つ. (注意)逆は成り立たない.
(証明) 平面 と曲面 との共有点からなる曲線 は についての 1 変数関数であり, が極値をとるとき も極値をとる. よって, となる. 同様にして,平面 を考えると を得る.
注意 2.189 (極値と接平面) 関数 は点 で極値をとるとする. このとき , であるから, を点 のまわりでテイラー展開すると
となり,1 次の項は存在しない. また, 曲面 の点 における接平面の方程式は
となり,法線ベクトルは
である.接平面は 平面に平行である.
例 2.190 (極値の計算例) 関数 の極値を考える. 連立方程式
を解くと候補の点 を得る. このとき点 とその任意の近傍の点 に対して,
が成り立つ. よって関数 は極小値 をとる.
例 2.191 (鞍点) 関数 の極値を考える. 連立方程式
を解くと候補の点 を得る. しかし, は極値とはならない. なぜなら,点 と 軸方向にずれた近傍の点 に対しては,
となり, は極小となる. 一方, 点 と 軸方向にずれた近傍の点 に対しては,
となり, は極大となる. このようにある方向では極小であり, また別の方向では極大となる点のことを 鞍点(saddle point)という.
定理 2.192 (極値) 関数 において点 が , をみたすとき, が極値となるための判定条件は次の通りである. ただし,
とおく.
- (i).
- , のとき, は点 で極小値をとる.
- (ii).
- , のとき, は点 で極大値をとる.
- (iii).
- のとき, は点 で極値をとらない.
- (iv).
- のとき,個別に判定する.
(証明) 点 から点 への増分を とする. をテイラー展開し, , であることを 用いると,
と表される. ただし,簡単のために
とおいた. を の 2 次多項式
であるとみると,この判別式は
である.よって,
は極小値 は極大値
が成り立つ. が正のとき に応じて は正と負と両方の値をとりうる. よって, は極値とはならない. また, の 2 次多項式と考えたときも同様の結果を得る.
例 2.193 (極値の計算例) 関数 の極値を求める. 連立方程式
を解くと極値の候補として を得る.このとき,
となる. よって, は極小値である.
例 2.194 (極値の計算例) 関数 の極値を求める. 連立方程式
を解くと極値の候補として を得る.このとき,
となる. であるから判別式 を用いて極値となるかは判定できない. そこで,点 と その近傍の点 , を考える. ただし, とする. このとき,
が成り立つ. 点 から 軸正の方向には増加傾向であり, 軸負の方向には減少傾向となるので, は極値ではない.
例 2.195 (極値の計算例) 関数 の極値を求める. 連立方程式
を解くと極値の候補として を得る.このとき,
となる. よって, は極小値である.
例 2.196 (極値の計算例) 関数 の極値を求める. 連立方程式
を解く. 第 1 式を と変形して第 2 式に代入すると
となる.これを解くと,極値の候補として
を得る.このとき,
を用いて極値であるか判定する. まず, の場合. より は極値ではない. 次に, の場合. , より, は極大値である.
平成20年2月2日