1.10 全単射

定義 1.38 (定義域,値域)   写像 $ f:X\to Y$ に関して, $ X$定義域(domain)といい,

$\displaystyle f(X)$ $\displaystyle = \left\{\left.\,{f(x)}\,\,\right\vert\,\,{x\in X}\,\right\}$    

で定義される集合を 値域(range)または像(image)という.

1.39 (値域の具体例)   写像 $ f:\mathbb{R}\to\mathbb{R};y=f(x)=2x+1$ の 定義域は $ \mathbb{R}=(-\infty,\infty)$ であり, 値域または $ f$ の像は $ f(\mathbb{R})=(-\infty,\infty)=\mathbb{R}$ である.

1.40 (値域の具体例)   写像 $ f:\mathbb{R}\to\mathbb{R};y=f(x)=2x^2+1$ の 定義域は $ \mathbb{R}=(-\infty,\infty)$ であり, 値域または $ f$ の像は $ f(\mathbb{R})=[1,\infty)\subsetneq\mathbb{R}$ である.

定義 1.41 (写像の分類)   写像 $ f:X\to Y$ に対して次の分類を定義する.

定理 1.42 (逆写像)   全単射のとき逆写像をもつ.

1.43 (全単射の具体例)   写像

$\displaystyle f:\mathbb{R}\to\mathbb{R};\qquad y=f(x)=ax+b$    

は上への 1 対 1 写像である. また,このとき逆写像をもち,

$\displaystyle f^{-1}:\mathbb{R}\to\mathbb{R}; \qquad x=f^{-1}(y)=\frac{y-b}{a}$    

と表される.

1.44 (全単射ではない具体例)   写像

$\displaystyle f:\mathbb{R}\to\mathbb{R};\qquad y=f(x)=ax^2+b$    

を考える. $ y\ge b$ より $ f(\mathbb{R})=[b,\infty)\neq\mathbb{R}$ をみたし,$ f$ は上への写像ではない. さらには, $ x=1,-1$ に対して $ y=a+b$ となり, 2 対 1 の写像であり 1 対 1 写像ではない. またこれらより,逆写像 $ f^{-1}$ は存在しない.


平成20年2月2日