1.5 体の性質

定理 1.18 (体の性質)   体 $ K$ について次の条件が成り立つ:
(i).
零元 0,単位元 $ 1$ は唯一つに定まる.
(ii).
和の逆元 $ -a$ は各 $ a$ に対して唯一つに定まる.
(iii).
積の逆元 $ a^{-1}$ は各 $ a$ に対して唯一つに定まる.
(iv).
$ -(-a)=a$.
(v).
$ 0a=0$.
(vi).
$ (-1)a=-a$.
(vii).
$ (-1)(-1)=1$.
(viii).
$ a(-b)=-(ab)=(-a)b$.
(ix).
$ (-a)(-b)=ab$.
(x).
$ ab=0$ $ \Rightarrow$ $ a=0$ または $ b=0$.
(xi).
$ (-a)^{-1}=-(a^{-1})$.
(xii).
$ (ab)^{-1}=b^{-1}a^{-1}$.

1.19 (零元,単位元,逆元の一意性)   これを示せ.


(証明)     (i) 零元が 0, $ 0'$ と二つ存在するとする. すなわち

$\displaystyle 0+a=a=0+a\,,\quad 0'+a=a=0'+a$    

とする. この式は全ての元 $ a$ で成立するので, 第一式の $ a$$ 0'$ とし, 第二式の $ a$0 とすると

$\displaystyle 0+0'=0'+0=0'\,,\quad 0'+0=0+0'=0$    

となる. $ 0+0'=0'$, $ 0+0'=0$ より, $ 0=0'$ を得る. 零元は唯一つに定まる.

(ii) $ a$ の和の逆元が $ b$, $ b'$ と二つ存在するとする. すなわち

$\displaystyle a+b=b+a=0\,,\quad a+b'=b'+a=0$    

とする. $ a+b=0$ に左から $ b'$ を加えると

$\displaystyle b'+(a+b)=b'+0$    

となる. 和の結合則より左辺の和の順を変える. 右辺は零元を加えているので

$\displaystyle (b'+a)+b=b'$    

が成り立つ. $ b'+a=0$ を用いると

$\displaystyle 0+b=b'$    

である.よって

$\displaystyle b=b'$    

を得る. $ a$ に対する和の逆元は唯一つに定まる.

(iii)は(ii)と同様に示される.他は自習とする.


平成20年2月2日