1.6 複素数

定義 1.20 (複素数)   複素数(complex number)とは, 実数 $ a,b$ に対して $ z=a+ib$ で定まる数である. ただし $ i$$ i^2=-1$ をみたし, 虚数単位(imaginary unit)と呼ぶ. 複素数 $ z=a+ib$$ a$実部(real part)といい $ a=\mathrm{Re}(z)$ と表す. $ b$虚部(imaginary part)といい $ b=\mathrm{Im}(z)$ と表す. 虚部が $ \mathrm{Im}(z)=0$ のとき $ z$実数(real number)といい, 実部が $ \mathrm{Re}(z)=0$ のとき $ z$純虚数(pure imaginary number)という.

定義 1.21 (複素平面)   複素数全体の集合を $ \mathbb{C}$ と表す. この集合を実部 $ \mathrm{Re}(z)$ を横軸に 虚部 $ \mathrm{Im}(z)$ を縦軸にとることできる平面を 複素平面(complex plane)と呼ぶ. このとき横軸を実軸(real axis)といい, 縦軸を虚軸(imaginary axis)という.

定義 1.22 (複素共役)   複素数 $ z=a+ib$ に対して複素数 $ \overline{z}=a-ib$$ z$複素共役(complex conjugate)という.

定義 1.23 (複素数の絶対値と偏角)   複素数 $ z=a+ib$ に対して実数 $ \vert z\vert=\sqrt{a^2+b^2}$$ z$絶対値(absolute value) または大きさ(modulus)という. $ \arg z=\arctan(b/a)$$ z$偏角(argument)という.

注意 1.24 (複素数の絶対値と偏角)   複素平面上で原点 0 とあるある複素数 $ z$ との距離は $ \vert z\vert$ である. また,実軸と 2 点 0, $ z$ を通る直線とのなす角は $ \arg z$ である.

定理 1.25 (複素数の性質)   複素数 $ z,w$ に対して次の性質が成り立つ:
(i).
$ \overline{z+w}=\overline{z}+\overline{w}$.
(ii).
$ \overline{zw}=\overline{z}\overline{w}$.
(iii).
$ \vert z+w\vert\leq \vert z\vert+\vert w\vert$.
(iv).
$ \vert zw\vert=\vert z\vert\vert w\vert$.
(v).
$ \vert z\vert^2=z\overline{z}$.
(vi).
$ \displaystyle{\mathrm{Re}(z)=\frac{z+\overline{z}}{2}}$.
(vii).
$ \displaystyle{\mathrm{Im}(z)=\frac{z-\overline{z}}{2i}}$.
(viii).
$ z-\overline{z}=0$ $ \Leftrightarrow$ $ z$ は実数.
(ix).
$ z+\overline{z}=0$ $ \Leftrightarrow$ $ z$ は純虚数.

1.26 (複素数の性質)   これらの性質を示せ.


平成20年2月2日