4.23 点の平面への射影変換
例 4.104 (点の平面への射影) において, 任意の点 から平面
☆
への射影変換 を求める. 方程式(☆)の一般解を求めると より
となる.平面(☆)は
と表せる. の基底 を グラム・シュミットの直交化法で正規直交基底化する.
とおくと となる.
は の正規直交基底となる. ここで点 の位置ベクトルを とし, 平面へ射影した点の位置ベクトルを とおく. 射影点 は平面 上にあるので, 基底 を用いて,
と表せる. このとき , であり, , が成り立つ. これより
となり, 方向の座標は と得られる. 方向の座標も 同様にして と得られる. よって射影点は
となる. 射影変換 が と得られた.を行列表示する. の任意の点 を標準基底 で表すと,
であり,これを で写すと
となる. ここで,
より,
と行列表示を得る. の標準基底における表現行列は
となる.
問 4.105 (射影変換の像と階数) , となることを示せ.
問 4.106 (射影変換の格と退化次数) 平面(☆)の法線ベクトルは である. とおく. , となることを示せ.
注意 4.107 (射影変換の正則性) であり は存在しない. よって射影変換 は正則変換ではない. 例えば ( ) に対して となる. 直線上のすべての点が原点 に写されるので, 逆元 は存在しない.
問 4.108 (射影変換の表現行列とべき等行列) が成り立つことを示せ.
注意 4.109 (射影変換の表現行列とべき等行列) に対して射影変換 を作用させると, となる. は平面 上にあり である. に対してさらに を作用させると となる. は既に平面 上にあるので により動かない. よって であるから, となる. 任意の に対して成り立つので, を得る. をみたす行列をべき等行列という. 一般にべき等行列を表現行列にもつ線形変換は射影変換となる.
注意 4.110 (射影変換における直交補空間) , であることと, が 1 次独立であり となることから,
を得る. さらに, , であるから, と は互いに における直交補空間となる.
である.
注意 4.111 (射影変換の固有値空間) のとき, は既に平面 上にあるので, 射影変換 により動くことはない. すなわち,
が成り立つ. これは固有値 の 固有方程式 とみなせる. または, 変換 により ベクトル のスカラー 倍に写されるともみなせる. すべての に対して成り立つので, は固有空間 と等しい. また, より は と に直和分解される. であるから, も固有空間 となる(はずである). のとき, 平面 の原点 を通る法線上に があるので, は 射影変換 により原点 に写される. これは, 変換 により ベクトル のスカラー 倍に写されるともみなせる. よって, となる(はずである).
問 4.112 (射影変換の固有値空間) の固有空間を具体的に求めて, , が成り立つことを示せ.
平成20年2月2日