関数の増減と極値

定義 4.36 (増加，減少，極値)   $h$ を十分小さい正の数 $h>0$ とする． このとき関数 $f(x)$ に関して次の性質を定義する．

• $f(a-h)<f(a)<f(a+h)$ を満たすとき， 関数 $f(x)$ は点 $x=a$ において増加の状態 であるという．
• $f(a-h)>f(a)>f(a+h)$ を満たすとき， 関数 $f(x)$ は点 $x=a$ において減少の状態 であるという．
• $f(a-h)<f(a)>f(a+h)$ を満たすとき， 関数 $f(x)$ は点 $x=a$ において極大値 $f(a)$ をとるという．
• $f(a-h)>f(a)<f(a+h)$ を満たすとき， 関数 $f(x)$ は点 $x=a$ において極小値 $f(a)$ をとるという．

極大値，極小値を総称して極値と呼ぶ．

定理 4.37 (微分係数と増減，極値)   微分係数と関数の増減および極値の関係に関して次のことがいえる．

• $f'(a)>0$ のとき， $f(x)$ は点 $x=a$ において 増加の状態にある．
• $f'(a)<0$ のとき， $f(x)$ は点 $x=a$ において 減少の状態にある．
• $f'(a)=0$, $f''(a)<0$ のとき， $f(x)$ は点 $x=a$ において極大値をとる．
• $f'(a)=0$, $f''(a)>0$ のとき， $f(x)$ は点 $x=a$ において極小値をとる．

（証明） 関数 $f(x)$ をテイラー展開して

$$f(x) =f(a)+f'(a)(x-a)+\frac{f''(a)}{2}(x-a)^2+O\left((x-a)^3\right)$$ (581)

を得る．$x=a\pm h$ とおくと

$$f(a+h) = f(a)+f'(a)\,h+\frac{f''(a)}{2}h^2+O(h^3)$$ (582)

$$f(a-h) = f(a)-f'(a)\,h+\frac{f''(a)}{2}h^2+O(h^3)$$ (583)

となる．$h$ を十分小さな正の値として考える． $h^3$ 以降の項は十分小さく無視できる． $f'(a)>0$ のとき

$$f(a)-f'(a)\,h<f(a)<f(a)+f'(a)\,h$$ (584)

が成り立つので，テイラー展開の $2$ 次の項を無視しすれば

$$f(a-h)<f(a)<f(a+h)$$ (585)

を得る．よって $f(x)$ は増加の状態にある． 次に $f'(a)<0$ のとき，同様に

$$f(a)-f'(a)\,h>f(a) >f(a)+f'(a)\,h$$ (586)

$$\Rightarrow f(a-h)>f(a) >f(a+h)$$ (587)

となるので， $f(x)$ は減少の状態にある． 次に $f'(a)=0$, $f''(a)<0$ のとき，

$$f(a)+\frac{f''(a)}{2}\,h^2<f(a) >f(a)+\frac{f''(a)}{2}\,h^2$$ (588)

$$\Rightarrow f(a-h)<f(a) >f(a+h)$$ (589)

となるので，$f(x)$ は $x=a$ において極大値をとる． 最後に $f'(a)=0$, $f''(a)>0$ のとき，

$$f(a)+\frac{f''(a)}{2}\,h^2>f(a) <f(a)+\frac{f''(a)}{2}\,h^2$$ (590)

$$\Rightarrow f(a-h)>f(a) <f(a+h)$$ (591)

となるので，$f(x)$ は $x=a$ において極小値をとる．

問 4.38   教科書（p.58）問題 3-4．

Kondo Koichi
Created at 2002/09/12