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17 ベクトルで張られる空間

定義 1.76 (ベクトルによって生成される空間)   ベクトル $ \vec{u}_{1},\vec{u}_{2},\cdots,\vec{u}_{n} \in V$ の 線形結合全体の集合を

  $\displaystyle \langle\vec{u}_{1},\vec{u}_{2},\cdots,\vec{u}_{n}\rangle = \left\...
...dots+c_{n}\vec{u}_{n} \right\vert c_{1},c_{2},\cdots,c_{n}\in\mathbb{R}\right\}$    

と定義する. この集合を ベクトル $ \vec{u}_{1},\vec{u}_{2},\cdots,\vec{u}_{n}$ に よって生成される(張られる)空間という.

定理 1.77 (ベクトルにより生成される空間と部分空間)   ベクトルにより生成される空間

$\displaystyle W= \langle\vec{u}_{1},\vec{u}_{2},\cdots,\vec{u}_{n}\rangle, \qquad \vec{u}_{1},\vec{u}_{2},\cdots,\vec{u}_{n} \in V$    

$ V$ の部分空間である.


(証明)     $ W$ の任意の 2 つのベクトルは

$\displaystyle \vec{a}= a_1\vec{u}_1+ a_2\vec{u}_2+ \cdots+ a_n\vec{u}_n, \qquad \vec{b}= b_1\vec{u}_1+ b_2\vec{u}_2+ \cdots+ b_n\vec{u}_n$    

と表される. これらと任意のスカラー $ \alpha,\beta\in\mathbb{R}^2$ との 線形結合は

$\displaystyle \alpha\vec{a}+\beta\vec{b}$ $\displaystyle = (\alpha a_1+\beta b_1)\vec{u}_1+ (\alpha a_2+\beta b_2)\vec{u}_2+ \cdots+ (\alpha a_n+\beta b_n)\vec{u}_n$    
  $\displaystyle = c_1\vec{u}_1+ c_2\vec{u}_2+ \cdots+ c_n\vec{u}_n \in W$    

となる.よって $ W$ は部分空間である.

例 1.78 (ベクトルによって生成される空間の具体例)   基本ベクトル $ \vec{e}_{1},\vec{e}_{2},\cdots,\vec{e}_{n}\in
\mathbb{R}^{n}$ により生成される空間

$\displaystyle W=<\vec{e}_1,\vec{e}_2,\cdots,\vec{e}_n>$    

を考える.$ W$ の任意のベクトルは

$\displaystyle x_1\vec{e}_1+ x_2\vec{e}_2+ \cdots+ x_n\vec{e}_n = x_1 \begin{bma...
...nd{bmatrix} = \begin{bmatrix}x_1 \\ x_2 \\ \vdots \\ x_n \end{bmatrix} =\vec{x}$    

となる. 係数 $ x_1,x_2,\cdots,x_n$ はすべての実数であるから, ベクトル $ \vec{x}$ のなす集合は $ \mathbb{R}^n$ と等しい. よって,

$\displaystyle <\vec{e}_1,\vec{e}_2,\cdots,\vec{e}_n>=\mathbb{R}^{n}$    

が成り立つ.

例 1.79 (ベクトルによって生成される空間の具体例)   ベクトルにより生成される空間

$\displaystyle W= <\vec{u}_1,\vec{u}_2>= \left\langle \begin{bmatrix}1 \\ 1 \end{bmatrix}, \begin{bmatrix}0 \\ 1 \end{bmatrix} \right\rangle$    

を考える. $ W$ の任意のベクトルは

$\displaystyle y_1\vec{u}_1+ y_2\vec{u}_2 = y_1 \begin{bmatrix}1 \\ 1 \end{bmatr...
...egin{bmatrix}0 \\ 1 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix}y_1 \\ y_1+y_2 \end{bmatrix}$    

である. 2 つのスカラー $ y_1,y_2$ はすべての実数をとる. ここで $ y_1,y_1+y_2$ を新たな 2 つのスカラーと見なしてもよい. すなわち,任意の実数 $ x_1,x_2$ を用いて $ y_1=x_1$, $ y_1+y_2=x_2$ とおく. このとき,

$\displaystyle y_1\vec{u}_1+ y_2\vec{u}_2 = \begin{bmatrix}y_1 \\ y_1+y_2 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix}x_1 \\ x_2 \end{bmatrix} = \vec{x}$    

と表される. ベクトル $ \vec{x}$ 全体のなす集合は $ \mathbb{R}^2$ と等しい. 以上より,

$\displaystyle W=<\vec{u}_1,\vec{u}_2>=\mathbb{R}^2$    

が成立する.


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Kondo Koichi
Created at 2004/12/13