2.24 関数の極限

定義 2.83 (右極限，左極限)   変数 $x$ を右から $a$ に近づけたときの $f(x)$ の値が $b$ に近づくとき

$$\lim_{x\to a+0}f(x)=b$$

と書き，右極限（right-hand limit）と呼ぶ． 同様に， 変数 $x$ を左から $a$ に近づけたときの $f(x)$ の値が $b$ に近づくとき

$$\lim_{x\to a-0}f(x)=b$$

と書き，左極限（left-hand limit）と呼ぶ．

また略記として

$$f(a+0)=\lim_{x\to a+0}f(x)\,,\qquad f(a-0)=\lim_{x\to a-0}f(x)$$

と書くこともある．

定義 2.84 (関数の極限)   変数 $x$ を $a$ に近づけるとき， その近づけ方に依らず全て同じ極限となるとき， すなわち

$$\lim_{x\to a+0}f(x)= \lim_{x\to a-0}f(x)=b$$

が成り立つとき， そのときに限り $x\to a$ における関数 $f(x)$ の極限が存在し，

$$\lim_{x\to a}f(x)=b$$ (4)

と書く． 極限が存在するとき次のように表現する：

$$x a \nonumber$$

$$f(x) b$$

$$\Leftrightarrow \displaystyle{\lim_{x\to a}f(x)=b}.$$

$$\Leftrightarrow f(x) \to b \quad (x\to a).$$

$$\Leftrightarrow f(x) x\to a b$$

収束しないとき発散する（divergent）という．

例 2.85 (関数の極限の具体例)   関数 $f(x)=x^2$ を考える． このとき

$$\lim_{x\to2-0}f(x)=\lim_{x \to2+0}f(x)=4\,$$

となる． 右からの極限も左からの極限も存在し同じ値となる． よって

$$\lim_{x\to2}f(x)=4\,$$

である．

例 2.86 (関数の極限の具体例)   関数

$$f(x)=\frac{\vert x\vert}{x}\quad(x\ne0)$$

を考える． $x>0$ のとき $f(x)=x/x=1$ であるから 右極限は

$$\lim_{x\to+0}f(x)=1\,$$

となる． $x<0$ のとき $f(x)=(-x)/x=-1$ であるから 左極限は

$$\lim_{x\to-0}f(x)=-1\,$$

となる． 右極限と左極限が一致しないので， 極限 $${\lim_{x\to0}f(x)}$$ は存在しない．

例 2.87 (関数の極限の具体例)   関数

$$f(x)=\sin\left(\frac{1}{x}\right)\,$$

を考える． $x\to+0$ のとき $1/x\to+\infty$ である． $1/x\to+\infty$ であるから $f(x)$ は $1$ と $-1$ の間を振動する． よって右極限 $${\lim_{x \to +0}f(x)}$$ は存在しない． $x\to-0$ のとき $1/x\to-\infty$ である． 以下同様で左極限 $${\lim_{x \to -0}f(x)}$$ は存在しない． 右極限も左極限も存在しないので， 極限 $${\lim_{x\to0}f(x)}$$ は存在しない．

平成19年10月3日