4.15 余因子行列と逆行列
定理 4.92 (行列式と行列の正則性) 正方行列に対して,
のとき
は正則である.
(証明) 定理
(765)
であるから,とすると各辺を
で割って
(766)
が成り立つ.よっては
の逆行列であり,
は正則である.
定理 4.93 (余因子行列と逆行列) 正方行列に対して,
のとき
の逆行列は
(767)
で与えられる.
定理 4.94 (逆行列が存在するための十分条件) 正方行列,
に対して
(または
)が成立するとき,
は
の逆行列となる.
(証明)より,両辺の行列式をとると
(768)
が成り立つ. これよりを得る. よって,
のとき
は正則であるから, 逆行列
をもつ. さらに
が存在することを用いると
(769)
が成り立つ.が示された.
例 4.95 (余因子行列による逆行列の計算の具体例)のとき逆行列は
(770) (771)
である.のとき逆行列は
(772) (773)
である.
例 4.96 (余因子行列による逆行列の計算例) 行列
(774)
の逆行列を求める. 行列式は
(775)
であるから, 逆行列は
(776)
で与えられる.
例 4.97 (余因子行列による逆行列の計算例) 行列
(777)
の逆行列を求める. 小行列の行列式は
(778) (779) (780)
であり,行列式は
(781)
であるので, 逆行列は
(782) (783)
と与えられる.
平成20年2月2日