定理 4.47 (退化次数,階数)
線形写像
に関して
が成立する.
(証明)
の基底を
, ,
とし,
の基底を
, ,
とする.
また, のベクトル
が
をみたすとする.
このとき 1 次関係
に対して
を作用させると
となる.
,
,
は
1 次独立なので
となる.
このとき
であり,
,
,
は
1 次独立であるか
となる.
よって
,
,
,
,
,
は
1 次独立である.
次に,
の任意のベクトル
を
で写された
ベクトル
は
のベクトルであるから,
と書ける.
これより
が成り立つ.
ベクトル
は
に含まれる.よって
と書けるので,
を得る.
,
は任意であるから,
となる.
以上より,
個のベクトル
,
,
,
が
の基底となる,
よって
,
,
を得る.
例 4.48 (線形写像の像と核の具体例)
線形写像
の像
,核
と
それらの次元である階数
, 退化次数
を求める.
まず を簡約化すると
となる.
このとき
,
は
1 次独立であり,その他のベクトルは
と表される.
同じ 1 次関係が
に対しても成り立つので,
,
は 1 次独立であり,
その他のベクトルは
☆ |
|
となる.
また,方程式
の解は
★ |
|
と表される.
の核
は方程式
の
解(★)の集合であるから,
となる.
は 1 次独立であり,
の基底となる.
よって退化次数は
と得られる.
の像
の元 は
任意のベクトル
に対して,
により定まる.
(☆)を用いると
と表される.ここで
,
は任意の実数であるから,
が成り立つ.
は 1 次独立であり,
の基底となる.よって
を得る.
以上より,
核
は方程式
の解空間であるから,
核の任意のベクトルは一般解
であり,
,
と表された.
この結果は
つまり,3 次元空間
内のすべての点が
写像
によりすべて一つの点
に写されることを意味する.
点は零次元の空間である.
よって,写像
は次元を 3 次元退化させている.
それでは,
以外の点
に
写される場合はどうであろうか.
つまり,
をみたす
の集合を求める.
を
となるように選べば,
非同次方程式
の一般解が存在する.
このとき,一般解は
となる.
ここで,
は
の簡約化行列とする.
,
,
は任意の実数であるから,
方程式
の解空間は 3 次元となる.
ただし,この解空間
は原点を通らないのでベクトル空間ではない.
核
を
だけ平行移動した空間となる.
よって,写像
は
任意の
に対して
3 次元空間
内のすべての点をひとつの点
に写す写像である.
次元を 3 次元退化させている.
は
のベクトルであり,
であるから,
1 次独立となるベクトルを二つ
,
選べる.
このとき
,
も
1 次独立となる.
であり,
,
,
,
,
は
の基底となる.
よって,
と表される.
これより
が成立する.