4.16 直交変換
定義 4.74 (直交変換) 内積空間 において, 線形変換 ; が
をみたすとき, を直交変換(orthogonal transformation)という.
定理 4.75 (直交変換) 内積空間 において, , , を 正規直交基底とする. 線形変換 ; が 直交変換となるための必用十分条件は, , , が 正規直交基底となることである.
(証明) (必用条件) が直交変換であれば となるで,
(十分条件) , , を 正規直交基底とする. なすわち, とする. 任意のベクトル は
と表される. このとき
となる. よって を得る.
定理 4.76 (直交変換の内積の不変性) 線形変換 が直交変換であるための必用十分条件は
である.
(証明) (必用条件) が直交変換であれば であるから, とおくと, となり, を得る. (十分条件) , , を正規直交基底とする. 任意のベクトル を
と表す. このとき
となる. は任意であり, 恒等式 が成り立つためには
をみたす必要がある. よって, , , は 正規直交基底であり, は直交変換となる.
注意 4.77 (直交変換のノルムの不変性) 直交変換 において,長さは不変である.
定理 4.78 (直交変換の角の不変性) 直交変換 において,角度は不変である.
(証明) , とおく. , , より,
を得る. , のなす角と , のなす角とは等しい.
注意 4.79 (合同変換) 直交変換は合同変換のひとつである. 合同変換(congruent transformation)とは, 長さと角を不変に保つ変換のことをいう. 合同変換で写される図形は,変換前の図形と後の図形とは合同となる. また,角を不変に保ち,長さはある定数倍になる変換のことを 相似変換(similarity transformation)という. 角を不変に保つ変換を等角変換(isometric transformation)という.
注意 4.80 (合同変換) 回転変換と鏡映変換は合同変換である.
平成20年2月2日