2.2 ベクトル

定義 2.1 (ベクトルその1)   位置の違いを無視して, 向きと大きさをもつ量 (矢印,有向線分(oriented segment))を ベクトル(vector)という. これに対して方向をもたない普通の量をスカラー(scalar) という.

注意 2.2 (ベクトルの平行移動は同じもの)   始点(initial point) $ A$ から 終点(terminal point) $ B$ への有向線分を 表すベクトルを $ \overrightarrow{AB}$ と表記する. ベクトル $ \overrightarrow{AB}$ と ベクトル $ \overrightarrow{PQ}$ とを原点に平行移動したとき これらのベクトルが等しければ, $ \overrightarrow{AB}=\overrightarrow{PQ}$ である. すなわち, ベクトルは平行移動しても同じ量であるとみなす. たくさんある同じベクトルのうち代表して始点が原点にあるものを選ぶ.

定義 2.3 (ベクトルその2)   列ベクトル(column vector)

$\displaystyle \begin{bmatrix}a_{1} \\ a_{2} \\ \vdots \\ a_{n} \end{bmatrix}$ (18)

行ベクトル(row vector)

$\displaystyle \begin{bmatrix}a_{1} & a_{2} & \cdots & a_{n} \end{bmatrix}$ (19)

を総称してベクトル(vector)という. 括弧の中の値 $ a_1$, $ \cdots$, $ a_n$ をベクトルの 成分(component)または要素(element)という. $ n$ 次の列ベクトル全体の集合を $ \mathbb{R}^{n}$ で表す. $ n$ 次の行ベクトル全体の集合を $ \mathbb{R}_{n}$ で表す. $ \mathbb{R}^{n}$, $ \mathbb{R}_{n}$$ n$ 次元実ベクトル空間($ n$-dimensional real vector space) という. また,要素が複素数の場合は $ \mathbb{C}^{n}$, $ \mathbb{C}_{n}$ と表し, $ n$ 次元複素ベクトル空間($ n$-dimensional complex vector space) という.

注意 2.4 (括弧)   行ベクトル,列ベクトルの括弧は, 丸い括弧でも角張った括弧でもどちらを使ってもかまわない:

  $\displaystyle \begin{bmatrix}* \\ * \\ \vdots \\ * \end{bmatrix}, \qquad \begin...
...dots & * \end{bmatrix}, \qquad \begin{pmatrix}* & * & \cdots & * \end{pmatrix}.$ (20)

注意 2.5 (列ベクトル,行ベクトル)   $ n$ 次の列ベクトルは $ n\times1$ 行列である. $ n$ 次の行ベクトルは $ 1\times n$ 行列である.


平成20年4月22日