2.12 全微分可能性
定義 2.61 (全微分可能) 関数 において, 点 から点 への 増分
に対して
をみたす , が存在するとき, 関数 は 全微分可能(total differentiable)であるという. このとき,
と表記し, を の全微分 または単に微分という.
例 2.62 (微分可能) 関数 は全微分可能であるか考える. まず,増分は
である.この増分が
の形をみたすと仮定する. このとき式変形すると
となる.ここで , とおき, の極限をとると,
を得る. となるためには
とおく. よって,
が成り立つ. 関数 は全微分可能である. また, の全微分は
となる.
例 2.63 (微分可能) 関数 は全微分可能であるか考える. まず,増分は
である.この増分が
の形をみたすと仮定する. このとき式変形すると
となる.ここで , とおき, の極限をとると,
を得る. となるためには
とおく. よって, のとき
が成り立つ. 関数 は のとき全微分可能である. また, の全微分は
となる.
例 2.64 (微分可能) 関数 が原点で全微分可能であるか考える. まず,原点における増分は
である.この増分が
の形をみたすと仮定する. このとき式変形すると
となる.ここで , とおくと,
となる. 極限をとると
となる. これが 0 となる , は のとき , であり, のとき , (復号同順)である. よって, 極限の取り方によらず , は一意に定まらないので, は原点で全微分不可能である.
平成21年12月2日