2.44 1 変数関数の極値

定義 2.200 (極値)   関数 $ f(x)$ が, 点 $ x=a$ とその任意の近傍の点 $ x=a+h$ に対して

$\displaystyle f(a)>f(a+h)$    

をみたすとき,$ f(x)$ は点 $ x=a$極大値 $ f(a)$ をとるという. また,

$\displaystyle f(a)<f(a+h)$    

をみたすとき,$ f(x)$ は点 $ x=a$極小値 $ f(a)$ をとるという. 極大値,極小値を総称して極値という.

定理 2.201 (極値の必要条件)   関数 $ f(x)$ が点 $ x=a$ で極値をとるとき,$ f'(a)=0$ が成り立つ. (注意)逆は成り立たない.


(証明)     関数 $ f(x)$ を点 $ x=a$ のまわりで $ x=a+h$ についてテイラー展開すると,

$\displaystyle f(a+h)=f(a)+f'(a)h+\frac{1}{2}f''(a)h^2+O(h^3)$    

となる.これより,

$\displaystyle f(a+h)-f(a)=f'(a)h+\frac{1}{2}f''(a)h^2+O(h^3)$    

が成り立つ. 右辺の第 1 項目は $ h>0$ のとき $ h<0$ のときで符号が反転し, 右辺全体の符号も反転する. 任意の近傍の点において $ f(a+h)-f(a)>0$ または $ f(a+h)-f(a)<0$ をみたすときのみ極値をとるので, 第 1 項目が 0 となる必要があり, $ f'(a)=0$ が極値をもつ必要条件となる.

定理 2.202 (極大,極小)   関数 $ f(x)$ が点 $ x=a$ において, $ f'(a)=0$, $ f''(a)>0$ をみたすとき $ f(a)$ は極小値となる. $ f'(a)=0$, $ f''(a)<0$ をみたすとき $ f(a)$ は極大値となる. (注意)$ f''(a)=0$ のときは別途調べる.


(証明)     前述の定理より明らか.

2.203 (極値)   関数 $ \displaystyle{f(x)=\frac{x^3}{3}-\frac{3x^2}{2}+2x}$ の極値を考える. $ f'(x)=x^2-3x+2=(x-1)(x-2)=0$ より $ x=1$, $ x=2$ が極値をもつ候補の点となる. $ x=1$$ x=2$ のまわりでテイラー展開すると,

  $\displaystyle f(1+h)=f(1)+f'(1)h+\frac{f''(1)}{2}h^2+O(h^3)=f(1)-\frac{1}{2}h^2+O(h^3)$    
  $\displaystyle f(2+h)=f(2)+f'(2)h+\frac{f''(2)}{2}h^2+O(h^3)=f(1)+\frac{1}{2}h^2+O(h^3)$    

となる.これより,それぞれ

  $\displaystyle f(1+h)-f(1)=-\frac{1}{2}h^2+O(h^3)<0$   $\displaystyle \Rightarrow\qquad f(1+h)<f(1)$    
  $\displaystyle f(2+h)-f(2)=\frac{1}{2}h^2+O(h^3)>0$   $\displaystyle \Rightarrow\qquad f(2+h)>f(2)$    

を得る. よって,$ f(1)=5/6$ は極大値, $ f(2)=2/3$ は極小値となる.

2.204 (極値)   関数 $ f(x)=x^3$ を考える. $ f'(x)=3x^2=0$ より,$ x=0$ が極値の候補となる. $ x=0$ のまわりでテイラー展開すると,

$\displaystyle f(h)= f(0)+f'(0)h+\frac{f''(0)}{2}h^2+\frac{f'''(0)}{3!}h^3+O(h^4)= f(0)+h^3+O(h^4)$    

となる.これより,

$\displaystyle f(h)-f(0)=h^3+O(h^4)$    

が成り立つ.$ h>0$ のとき右辺は正,$ h<0$ のとき右辺は負となるので, $ x=0$ は極値とはならない.

2.205 (極値)   関数 $ f(x)=x^4$ を考える. $ f'(x)=4x^3=0$ より,$ x=0$ が極値の候補となる. $ x=0$ のまわりでテイラー展開すると,

$\displaystyle f(h)= f(0)+f'(0)h+\frac{f''(0)}{2}h^2+\frac{f'''(0)}{3!}h^3++\frac{f^{(4)}(0)}{4!}h^4+O(h^5)= f(0)+h^4+O(h^5)$    

となる.これより,

$\displaystyle f(h)-f(0)=h^4+O(h^5)>0 \quad\Rightarrow\quad f(h)>f(0)$    

が成り立つ. よって,$ f(0)=0$ は極小値となる.


平成21年12月2日