2.45 2 変数関数の極値
定義 2.206 (極値) 関数 が, 点 とその任意の近傍の点 に対して
をみたすとき, は点 で 極大値 をとるという. また,
をみたすとき, は点 で 極小値 をとるという. 極大値,極小値を総称して極値という.
定理 2.207 (極値の必用条件) 関数 が点 で極値をとるとき,
が成り立つ. (注意)逆は成り立たない.
(証明) 平面 と曲面 との共有点からなる曲線 は についての 1 変数関数であり, が極値をとるとき も極値をとる. よって, となる. 同様にして,平面 を考えると を得る.
注意 2.208 (極値と接平面) 関数 は点 で極値をとるとする. このとき , であるから, を点 のまわりでテイラー展開すると
となり,1 次の項は存在しない. また, 曲面 の点 における接平面の方程式は
となり,法線ベクトルは
である.接平面は 平面に平行である.
例 2.209 (極値の計算例) 関数 の極値を考える. 連立方程式
を解くと候補の点 を得る. このとき点 とその任意の近傍の点 に対して,
が成り立つ. よって関数 は極小値 をとる.
例 2.210 (極値の計算例) 関数 の極値を考える. 連立方程式
を解くと候補の点 を得る. このとき点 とその任意の近傍の点 に対して,
が成り立つ. よって関数 は極小値 をとる.
例 2.211 (鞍点) 関数 の極値を考える. 連立方程式
を解くと候補の点 を得る. このとき,
が成り立つ. 点 と 軸方向にずれた近傍の点 に対しては,
となり, は極小となる. 一方, 点 と 軸方向にずれた近傍の点 に対しては,
となり, は極大となる. よって, は極値とはならない. このようにある方向では極小であり, また別の方向では極大となる点のことを 鞍点(saddle point)という.
例 2.212 (極値の計算例) 関数 の極値を求める. 連立方程式
を解くと極値の候補として を得る.このとき,
が成り立つ. は常に正であるが, は のとき正, のとき負となる. 右辺全体では正,負が決定しない. よって, は極値ではない.
例 2.213 (極値の計算例) 関数 の極値を求める. 連立方程式
を解くと極値の候補として を得る. のまわりでテイラー展開すると,
となる.よって,
が成り立つ. は極小値となる.
例 2.214 (極値の計算例) 関数 の極値を求める. 連立方程式
を解く. 第 1 式を と変形して第 2 式に代入すると
となる.これを解くと,極値の候補として
を得る. のまわりでテイラー展開すると,
となる.よって,
の右辺は , のときは正, , のときは負となり, 符号が定まらない. は極値ではない. のまわりでテイラー展開すると,
となる. これより,
が成り立つ. は極大値となる.
例 2.215 (極値の計算例) 関数 の極値を求める. 連立方程式
を解く. 第 1 式と第 2 式を足し合わせると であるから, である. これを第 1 式に代入すると, であるから, となる. よって,極値の候補は
である. それぞれの点のまわりで 2 次までテイラー展開する.
より, のときは,
となる. よって のときは が成立する. のときは 2 次の項が消えるので, さらに高次の項まで展開する必要がある.
より, 4 次の項まで展開すると,
となる. のとき, が成立する. と のときでは符号が異なるので, は極値ではない. 次に, (復号同順)のときは,
となる. よって, が成立し, は極大値となる.
例 2.216 (極値の計算例) 関数 の極値を求める. 連立方程式
を解く. が極値の候補となる. のまわりでテイラー展開すると,
となる.よって,
の右辺の符号は定まらない. は極値ではない.
平成21年12月2日