5.15 2 次正方行列の対角化

5.43 (対角化の具体例)   行列

$\displaystyle A= \begin{bmatrix}8 & -10 \\ 5 & -7 \end{bmatrix}$    

を対角化する.

まず,行列 $ A$ の固有多項式は

$\displaystyle g_A(t)=\det(tE-A)= \begin{vmatrix}t-8 & 10 \\ -5 & t+7 \end{vmatrix} = (t+2)(t-3)$    

となるので, $ g_A(\lambda)=0$ より $ A$ の固有値は $ \lambda_1=-2$, $ \lambda_2=3$ である. $ \lambda=\lambda_1=-2$ のとき

$\displaystyle -2E-A= \begin{bmatrix}-10 & 10 \\ -5 & 5 \end{bmatrix} \quad\xrightarrow{\text{簡約化}}\quad \begin{bmatrix}1 & -1 \\ 0 & 0 \end{bmatrix}$    

より, $ (-2E-A)\vec{x}=\vec{0}$ を解いて 固有ベクトルは

$\displaystyle \vec{x}= c \begin{bmatrix}1 \\ 1 \end{bmatrix} = c\,\vec{p}_1 \qquad(c\neq 0)$    

である. $ \lambda=\lambda_2=3$ のとき

$\displaystyle 3E-A= \begin{bmatrix}-5 & 10 \\ -5 & 10 \end{bmatrix} \quad\xrightarrow{\text{簡約化}}\quad \begin{bmatrix}1 & -2 \\ 0 & 0 \end{bmatrix}$    

より, $ (3E-A)\vec{x}=\vec{0}$ を解いて 固有ベクトルは

$\displaystyle \vec{x}= c \begin{bmatrix}2 \\ 1 \end{bmatrix} = c\,\vec{p}_2 \qquad(c\neq 0)$    

である.

行列 $ A$ を対角化する. $ \lambda_1$ の固有ベクトルのひとつとして $ \vec{p}_1$ を選び, $ \lambda_2$ の固有ベクトルのひとつとして $ \vec{p}_2$ を選ぶ. このとき

$\displaystyle D= \begin{bmatrix}\lambda_1 & 0 \\ 0 & \lambda_2 \end{bmatrix} = ...
...ec{p}_1 & \vec{p}_2 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix}1 & 2 \\ 1 & 1 \end{bmatrix}$    

とおく. $ \det(P)=-1\neq0$ であるから,$ P$ は正則である. よって, $ A$

$\displaystyle D=P^{-1}AP$ (1)

と対角化される.

5.44 (対角化の確認)   $ D=P^{-1}AP$ が成立することを 数値を代入して確認せよ.

注意 5.45 (対角化と固有空間)   線形変換 $ f:\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}^2;\vec{y}=A\vec{x}$ の固有空間は

$\displaystyle W(-2;f)= \left\{\left.\,{c\,\vec{p}_1}\,\,\right\vert\,\,{c\in\ma...
...,\right\vert\,\,{c\in\mathbb{R}}\,\right\}= \left\langle \vec{p}_2\right\rangle$    

である. $ \dim(W(-2;f))=1$, $ \dim(W(3;f))=1$, $ W(-2;f)\cap W(3;f)=\{\vec{0}\}$ となるので,

$\displaystyle W(-2;f)\oplus W(3;f)=\mathbb{R}^2, \qquad \dim(W(-2;f))+\dim(W(3;f))=\dim(\mathbb{R}^2)$    

が成り立つ. $ \mathbb{R}^2$ は固有空間に直和分解される. $ W(-2;f)$ の基底は $ \{\vec{p}_1\}$$ W(3;f)$ の基底は $ \{\vec{p}_2\}$ $ \mathbb{R}^2$ の基底は $ \{\vec{p}_1,\vec{p}_2\}$ となる.

5.46 (固有空間)   固有空間 $ W(-2;f)$ は原点を通り方向ベクトル $ \vec{p}_1$ の直線であり, $ W(3;f)$ は原点を通り方向ベクトル $ \vec{p}_2$ の直線である. 二つの直線のなす角度を求めよ.


平成20年2月2日