5.18 対角化可能ではいない行列
例 5.53 (対角化できない場合の具体例) 行列
を対角化する.まず,行列
の固有多項式は
であるから,より 固有値は
2 重
となる.
のとき,
となるので,を解いて 固有ベクトルは
と得られる.のとき,
となるので,を解いて 固有ベクトルは
と得られる.行列
を対角化する. 重複する固有値は別のものとして考えて, 三つの固有値を
,
,
とおく. それぞれの固有値に属する固有ベクトルを
と選ぶ. このとき同じ固有値に属する固有ベクトルは 1 次独立となるように選びたい. しかしながら,固有空間
は
次元であり, 1 次独立な 2 本のベクトルを選ぶことはできない. そのため行列
は正則とはならない. なぜなら
となるらかである. 以上より行列は対角化できない.
注意 5.54 (固有空間による直和分解) 線形変換の固有空間は
である.,
,
となるので,
が成り立つ. 固有空間の和はとはなるが,
とはならない. このとき行列
は対角化できない.
平成20年2月2日