5.26 実標準形
実行列 が複素固有値 を もつとき,その複素共役 も固有値となる. なぜなら,固有多項式 は実係数であるから, のとき が成り立つからである. 固有値 に属する固有ベクトルを とすると である. 複素共役をとると となるので, に属する固有値ベクトルは となる. よって
である. これより
が成り立つ. 複素数 の実部を , 虚部を とおき, ベクトル の各要素の実部,虚部をとる操作を , とおく. このとき
を得る. の場合では,
が成り立つ. , が 1 次独立のとき は正則となるから, と表される.
定理 5.76 (実標準形) 実行列 は 複素数体上で対角化可能であるとする. 固有値を
とし,それに属する固有ベクトルを とする. このとき,行列 は
と実数体上でブロック対角化される. を実標準形(real canonical form???)という.
例 5.77 (実標準形の具体例) 行列
の固有多項式は
であるから, 固有値は より,
と複素数になる. それぞれの固有ベクトルは
より,
となる. よって を複素数体上で対角化すると
を得る. 次に を実数体上で実標準形に分解する. , となることに注意すると
を得る. 行列 , となることから, は既に実標準形のかたちをしている.
平成20年2月2日