5.28 交代行列の対角化
定義 5.84 (交代行列) 行列 が をみたすとき, を 歪対称行列(skew-symmetric matrix)または 交代行列(alternative matrix)という.
例 5.85 (交代行列の具体例)
定理 5.86 (交代行列の固有値) 交代行列の固有値はすべて純虚数または 0 である.
(証明) 行列 の固有値を としその固有ベトクルを とする. すなわち が成り立つとする. このとき, 上の内積を用いて,
が成り立つ. ここで, となることを用いた. これらを比較すると となる.固有ベクトル は とはならないから, が成立する. このとき は純虚数である.
注意 5.87 (交代行列) 交代行列は正規行列である.
定理 5.88 (交代行列の固有ベクトル) 交代行列において, 異なる固有値に属する固有ベクトルは直交する.
(証明) 交代行列は正規行列であるから固有ベクトルは直交する. または,次のように示す. において, 固有値は純虚数なので , , ( ) とする. 上の内積を用いて
となる.
であるから, より を得る.
定理 5.89 (交代行列の対角化) 交代行列 の 固有値を とする. このとき, は ユニタリー行列 を用いて
と 上で対角化される. ただし, は の固有ベクトルであり, がユニタリー行列となるように選ぶとする.
定理 5.90 (交代行列の実標準形) 交代行列 の 固有値を
とする. このとき, は 直交行列 を用いて
と実標準形でブロック対角化される. ただし, は の固有ベクトルであり, が直交行列となるように選ぶとする.
例 5.91 (交代行列の対角化の具体例) 行列
を対角化する.
より,固有値は である.
より,固有ベクトルはそれぞれ
となる.これより
と 上で対角化される. また, 上で実標準形では
となる.
平成20年2月2日