5.29 エルミート行列の対角化
定義 5.92 (エルミート行列) 行列 が をみたすとき をエルミート行列(Hermite matrix)という.
注意 5.93 (エルミート行列と対称行列) エルミート行列 の要素が実数のみであるとき, よりエルミート行列は対称行列となる.
例 5.94 (エルミート行列の具体例) エルミート行列の対角成分はすべて実数であり, 非対角成分は虚部の符号が反転する:
定理 5.95 (エルミート行列の固有値) エルミート列の固有値はすべて実数である.
(証明) とし, 上の内積を用いて,
が成り立つ. ここで, を用いた. , より, が成立する. は実数である.
注意 5.96 (エルミート行列) エルミート行列は正規行列である.
定理 5.97 (エルミート行列の固有ベクトル) エルミート行列において, 異なる固有値に属する固有ベクトルは直交する.
(証明) エルミート行列は正規行列であるので固有ベクトルは直交する. または,次のように示す. , , , ( ) とする. 上の内積を用いて,
となる.
であるから, より を得る.
定理 5.98 (エルミート行列の対角化) エルミート行列 の 固有値を とする. このとき, は ユニタリー行列 を用いて
と対角化される. ただし, は の固有ベクトルであり, がユニタリー行列となるように選ぶとする.
例 5.99 (エルミート行列の対角化の具体例) 行列
を対角化する.
より,固有値は である.
より,固有ベクトルはそれぞれ
となる. であるから, 規格化して , とする. このとき はユニタリー行列 を用いて
と対角化される.
例 5.100 (エルミート行列の対角化の具体例) 行列
を対角化する.
より,固有値は (2 個), である.
より,固有ベクトルはそれぞれ
となる. , , であるから,
とおくと, 正規直交系 となる. このとき はユニタリー行列 を用いて
と対角化される.
平成20年2月2日