3.7 $ \mathbb{R}[x]_n$ の部分空間

3.36 (多項式からなる部分空間の具体例)   ベクトル空間

$\displaystyle \mathbb{R}[x]_3= \left\{\left.\,{f(x)=a_0+a_1x+a_2x^2+a_3x^3}\,\,\right\vert\,\,{a_0,a_1,a_2,a_3\in\mathbb{R}}\,\right\}$    

の部分集合

$\displaystyle W=\left\{\left.\,{f(x)\in\mathbb{R}[x]_3}\,\,\right\vert\,\,{f(1)=0,\,f(-1)=0}\,\right\}$    

$ \mathbb{R}[x]_3$ の部分空間ではない.


(証明)     (i) $ \mathbb{R}[x]_3$ の零ベクトルは $ f_0(x)=0$ である. $ f_0(1)=0$, $ f_0(-1)=0$ となるから, $ f_0\in W$ である. (ii) $ f,g\in W$ とする. すなわち $ f(\pm 1)=0$, $ g(\pm 1)=0$ をみたすとする. このとき $ (f+g)(\pm1)=f(\pm1)+g(\pm1)=0+0=0$ が成り立つ. よって $ f+g\in W$ となる. (iii) $ f\in W$, $ f(\pm 1)=0$ とする. 任意の $ \alpha\in\mathbb{R}$ に対して $ (\alpha\,f)(\pm1)=\alpha\,f(\pm1)=0$ が成り立つ.よって $ \alpha\,f\in W$ となる. (i), (ii), (iii)より, $ W$ $ \mathbb{R}[x]_3$ の部分空間である.

3.37 (多項式からなる部分空間の具体例)   ベクトル空間 $ \mathbb{R}[x]_3$ の部分集合

$\displaystyle W=\left\{\left.\,{f(x)\in\mathbb{R}[x]_3}\,\,\right\vert\,\,{f(1)=1}\,\right\}$    

$ \mathbb{R}[x]_3$ の部分空間ではない. なぜなら, $ f_0(1)=0\neq 1$ となるから, $ W\not\ni f_0=0$ である. よって $ W$ $ \mathbb{R}[x]_3$ の部分空間ではない.

3.38 (多項式からなる部分空間の具体例)   ベクトル空間 $ \mathbb{R}[x]_3$ の部分集合

$\displaystyle W=\left\{\left.\,{f(x)\in\mathbb{R}[x]_3}\,\,\right\vert\,\,{xf'(x)=2f(x)}\,\right\}$    

$ \mathbb{R}[x]_3$ の部分空間である.


(証明)     $ \mathbb{R}[x]_3$ の任意の元は $ f(x)=a_0+a_1x+a_2x^2+a_3x^3$ である. このとき $ xf'=2f$ より

$\displaystyle x(a_1+2a_2x+3a_3x^2)=2(a_0+a_1x+a_2x^2+a_3x^3) \quad\Rightarrow\quad 0=2a_0+a_1x-a_3x^3$    

となる.任意の $ x$ について成り立つので,

$\displaystyle a_0=0,\quad a_1=0,\quad \forall a_2\in\mathbb{R},\quad a_3=0$    

である.$ W$ の任意の元は $ f=a_2x^2$ と表される. (i) $ a_2=0$ のとき $ f=f_0=0\in W$. (ii) $ f=a_2x^2$, $ g=b_2x^2$ $ \in W$ に対して $ (f+g)(x)=(a_2+b_2)x^2=c_2x^2\in W$. (iii) $ f=a_2x^2\in W$, $ \alpha\in\mathbb{R}$ に対して $ (\alpha f)(x)=(\alpha a_2)x^2\in W$. (i), (ii), (iii)より $ W$ $ \mathbb{R}[x]_3$ の部分空間である.


平成20年2月2日