定理 3.85 (ベクトルの 1 次独立な最大個数)
ベトクルの集合
![$ \{\vec{u}_1$](img991.png)
,
![$ \vec{u}_2$](img751.png)
,
![$ \cdots$](img598.png)
,
![$ \vec{u}_m\}$](img992.png)
の 1 次独立なベクトルの最大個数が
![$ r$](img741.png)
であることの必用十分条件は,
![$ \vec{u}_1$](img750.png)
,
![$ \cdots$](img598.png)
,
![$ \vec{u}_m$](img752.png)
のなかに
![$ r$](img741.png)
個の 1 次独立な
ベクトルがあり,
他の
![$ m-r$](img1012.png)
個のベクトルはこの
![$ r$](img741.png)
個のベクトルの 1 次結合で
表されることである.
(証明)
(必用条件)
,
,
のうち
1 次独立な
個のベクトルを
,
,
とする.
このとき
,
,
,
(
) は 1 次従属であるから,
は
,
,
の 1 次結合で表される.
(十分条件)
個のベクトル
,
,
が 1 次独立であるとする.
,
,
の
1 次独立なベクトルの最大個数は
以上となる.
また,
他の
個のベクトル
,
,
が
,
,
の 1 次結合で表されるとする.
このとき,
と表されるから,
![$ \{\vec{u}_1$](img991.png)
,
![$ \cdots$](img598.png)
,
![$ \vec{u}_m\}$](img992.png)
の
1 次独立なベクトルの最大個数は
![$ \{\vec{u}_1$](img991.png)
,
![$ \cdots$](img598.png)
,
![$ \vec{u}_r\}$](img1016.png)
の
1 次独立なベクトルの最大個数
![$ r$](img741.png)
以下となる.
よって
![$ \{\vec{u}_1$](img991.png)
,
![$ \cdots$](img598.png)
,
![$ \vec{u}_m\}$](img992.png)
の
1 次独立なベクトルの最大個数は
![$ r$](img741.png)
である.
例 3.86 (ベクトルの 1 次独立な最大個数の具体例)
ベクトル
の 1 次独立なベクトルの最大個数と
そのときベクトルの組の一つを求める.
また,その他のベクトルを 1 次独立なベクトルの 1 次結合で表す.
まず,
ベクトル
の 1 次関係
を考える.これは
と表される.
方程式
![$ A\vec{x}=\vec{0}$](img515.png)
の解を求めることで,
1 次関係の係数
![$ \vec{c}$](img719.png)
が定まる.
行列
![$ A$](img267.png)
を簡約化すると
となる.
方程式
![$ B\vec{x}=\vec{0}$](img1022.png)
の解と
方程式
![$ A\vec{x}=\vec{0}$](img515.png)
の解とは等しく
![$ \vec{c}$](img719.png)
であるから,
ベクトル
![$ \vec{b}_1,\vec{b}_2,\cdots,\vec{b}_5$](img1023.png)
の 1 次関係と
ベクトル
![$ \vec{a}_1,\vec{a}_2,\cdots,\vec{a}_5$](img1018.png)
の 1 次関係は等しい.
まず,
の
1 次独立なベクトルの最大個数を考える.
に着目すると,
であり,
![$ \mathbb{R}^4$](img704.png)
の基本ベクトルである.
明らかに
ベクトルの組
![$ \{\vec{b}_1,\vec{b}_2,\vec{b}_4\}$](img1026.png)
は 1 次独立であるので,
1 次独立なベクトルの最大個数は
![$ 3$](img1027.png)
以上である.
他のベクトル
![$ \vec{b}_3,\vec{b}_5$](img1028.png)
について見ると
|
○![$\displaystyle )\quad \vec{b}_3= \begin{bmatrix}-1 \\ 2 \\ 0 \\ 0 \end{bmatrix} ...
...\end{bmatrix} = 2\vec{e}_1-\vec{e}_2+\vec{e}_3 = 2\vec{b}_1-\vec{b}_2+\vec{b}_4$](img1029.png) |
|
が成り立つ.
![$ \vec{b}_3,\vec{b}_5$](img1028.png)
はそれぞれ
![$ \vec{b}_1,\vec{b}_2,\vec{b}_4$](img1024.png)
に
関して 1 次従属である.
個以上のベクトルの組が 1 次従属となることを示す.
(その 1)
まず,
個の
ベクトルの組
,
,
,
,
に関する 1 次関係は(○)を用いると
となる.
この方程式の係数行列は
![$ B$](img269.png)
そのものであるから,
階数は
![$ 3$](img1027.png)
であり非自明な係数をもつ.
よって
![$ \{\vec{b}_1$](img1031.png)
,
![$ \vec{b}_2$](img1032.png)
,
![$ \vec{b}_3$](img1033.png)
,
![$ \vec{b}_4$](img1034.png)
,
![$ \vec{b}_5\}$](img1035.png)
は
1 次従属となる.
次に
![$ 4$](img1030.png)
個のベクトルの組が 1 次従属となることを示す.
![$ \{\vec{b}_2,\vec{b}_3,\vec{b}_4,\vec{b}_5\}$](img1039.png)
,
![$ \{\vec{b}_1,\vec{b}_3,\vec{b}_4,\vec{b}_5\}$](img1040.png)
,
![$ \{\vec{b}_1,\vec{b}_2,\vec{b}_4,\vec{b}_5\}$](img1041.png)
,
![$ \{\vec{b}_1,\vec{b}_2,\vec{b}_3,\vec{b}_5\}$](img1042.png)
,
![$ \{\vec{b}_1,\vec{b}_2,\vec{b}_3,\vec{b}_4\}$](img1043.png)
の
1 次関係は同様の操作で,
とそれぞれなる.
これらの方程式の係数行列はそれぞれ
行列
![$ B$](img269.png)
の第
![$ 1$](img76.png)
,
![$ 2$](img169.png)
,
![$ 3$](img1027.png)
,
![$ 4$](img1030.png)
,
![$ 5$](img488.png)
列目を除いた形をしている.
係数行列の階数はいずれも
![$ 3$](img1027.png)
以下であるから,
非自明な 1 次関係が存在する.
![$ 4$](img1030.png)
個のベクトルの組はいずれも 1 次従属となる.
(その 2)
また別の方法としては次のように示す.
方程式
![$ B\vec{c}=\vec{0}$](img1050.png)
の解は,
任意定数を
![$ \alpha$](img361.png)
,
![$ \beta$](img1051.png)
とすると
|
☆![$\displaystyle )\qquad (\alpha-2\beta)\vec{b}_1+(-2\alpha+\beta)\vec{b}_2+ \alpha\vec{b}_3-\beta\vec{b}_4+\beta\vec{b}_5= \vec{0}$](img1052.png) |
|
と表される.
![$ 5$](img488.png)
個のベクトルの組
![$ \{\vec{b}_1,\vec{b}_2,\vec{b}_3,\vec{b}_4,\vec{b}_5\}$](img1053.png)
の 1 次関係は(☆)である.
非自明な 1 次関係であるから
![$ \{\vec{b}_1,\vec{b}_2,\vec{b}_3,\vec{b}_4,\vec{b}_5\}$](img1053.png)
は
1 次従属となる.
また,(○)より
と非自明な 1 次関係が成り立つので,
ベクトルの組
![$ \{\vec{b}_1,\vec{b}_2,\vec{b}_3,\vec{b}_4\}$](img1043.png)
,
![$ \{\vec{b}_1,\vec{b}_2,\vec{b}_4,\vec{b}_5\}$](img1041.png)
は 1 次従属となる.
さらには(☆)において,
![$ \alpha=2\beta$](img1055.png)
,
![$ \beta=2\alpha$](img1056.png)
,
![$ \beta=0$](img512.png)
とおくと,
それぞれ
と非自明な 1 次関係が成り立つので,
![$ \{\vec{b}_2,\vec{b}_3,\vec{b}_4,\vec{b}_5\}$](img1039.png)
,
![$ \{\vec{b}_1,\vec{b}_3,\vec{b}_4,\vec{b}_5\}$](img1040.png)
,
![$ \{\vec{b}_1,\vec{b}_2,\vec{b}_3,\vec{b}_5\}$](img1042.png)
は
1 次従属となる.
以上より,ベクトルの組
の
1 次独立なベクトルの最大個数は
である.
これらの結果は
ベクトル
の
1 次関係にも適用される.
1 次独立なベクトルの最大個数は
であり,
その 1 次独立となるベクトルの組のひとつは
である.
また,その他のベクトルはこれらの 1 次結合
として表される.