3.20 1 次独立なベクトルの最大個数と行列の階数

定理 3.88 (行列の列ベクトルと行ベクトルの 1 次独立な最大個数)  

$\displaystyle \mathrm{rank}\,(A)$ $\displaystyle =$   $ A$ の列ベクトル 1 次独立な最大個数    
  $\displaystyle =$   $ A$ の行ベクトル 1 次独立な最大個数    


(証明)     行列 $ A$ を列ベクトルに分割し, $ \displaystyle{A=
\begin{bmatrix}
\vec{a}_1 & \cdots & \vec{a}_n
\end{bmatrix}}$ とおく. 行列 $ A$ を簡約化し, $ \displaystyle{B=
\begin{bmatrix}
\vec{b}_1 & \cdots & \vec{b}_n
\end{bmatrix}}$ を得たとする. $ r=\mathrm{rank}\,(A)$ とすると, ベクトル $ \vec{b}_1$, $ \cdots$, $ \vec{b}_n$ のうちで 主成分がある列ベクトルは, 左から順に基本ベクトル $ \vec{e}_1$, $ \cdots$, $ \vec{e}_r$ となる. 主成分がない他の列ベクトルは基本ベクトル $ \vec{e}_1$, $ \cdots$, $ \vec{e}_r$ の 1 次結合で表される. 基本ベクトルは明らかに 1 次独立であるから, $ \{\vec{b}_1$, $ \cdots$, $ \vec{b}_n\}$ の 1 次独立なベクトルの 最大個数は $ r$ となる. $ \{\vec{a}_1$, $ \cdots$, $ \vec{a}_n\}$ の 1 次関係は $ \{\vec{b}_1$, $ \cdots$, $ \vec{b}_n\}$ の 1 次関係と等しいので, $ \{\vec{a}_1$, $ \cdots$, $ \vec{a}_n\}$ の 1 次独立なベクトルの最大個数は $ r$ となる.

行列 $ A$ を行ベクトルに分割し簡約化して

$\displaystyle A= \begin{bmatrix}\vec{a}_1 \\ \vdots \\ \vec{a}_m \end{bmatrix} ...
...ex] \vec{b}_s \\ [-1ex] \vec{0}\\ [-1ex] \vdots \\ [-1ex] \vec{0} \end{bmatrix}$    

となるとする. $ B$ の零ベクトルではない行ベクトルの個数を $ s$ とする. このときベクトル $ \vec{b}_1$, $ \cdots$, $ \vec{b}_s$ の 1 次関係は

$\displaystyle c_1\vec{b}_1+ \cdots+ c_s\vec{b}_s= \begin{bmatrix}c_1 & * & c_2 & * & c_3 & *\cdots & c_s & * \end{bmatrix} = \vec{0}$    

であり,自明な係数 $ c_1=c_2=\cdots=c_s=0$ のみであるから, $ \vec{b}_1$, $ \cdots$, $ \vec{b}_s$ は 1 次独立である. よって $ \{\vec{b}_1$, $ \cdots$, $ \vec{b}_s\}$ の 1 次独立な ベクトルの最大個数は $ s=\mathrm{rank}\,(A)$ である. 次に,$ B$$ A$ を基本変形を繰り返して得られるので, $ B$ の行ベクトルすべては $ A$ の行ベクトルの 1 次結合

$\displaystyle \vec{b}_i= c_1\vec{a}_1+ \cdots+ c_m\vec{a}_m, \qquad i=1,2,\cdots,m$    

で表される.よって $ s\leq r$ が成り立つ. 一方,$ B$ に対して基本変形を繰り返して $ A$ を得ることもできるので,

$\displaystyle \vec{a}_i= c_1\vec{b}_1+ \cdots+ c_m\vec{b}_m, \qquad i=1,2,\cdots,m$    

と表される.よって $ r\leq s$ が成り立つ. 以上より, $ r=s=\mathrm{rank}\,(A)$ が得られる.


平成20年2月2日