3.30 次元と同じ個数の 1 次独立なベクトルは基底

定理 3.121 (ベクトルで張られる空間の次元)   ベクトル空間 $ V$ の次元が $ \dim(V)=n$ のとき, ベクトル $ \vec{v}_1$, $ \vec{v}_2$, $ \cdots$, $ \vec{v}_n\in V$ に対して 次の条件は等価である.
(i).
$ \vec{v}_1$, $ \vec{v}_2$, $ \cdots$, $ \vec{v}_n$$ V$ の基底である.
(ii).
$ \vec{v}_1$, $ \vec{v}_2$, $ \cdots$, $ \vec{v}_n$ は 1 次独立である.
(iii).
$ V=
\left\langle \vec{v}_1,\,\,
\vec{v}_2,\,\,
\cdots,\,\,
\vec{v}_n\right\rangle $.

3.122 (ベクトルで張られる空間の次元)   $ \mathbb{R}^3$ の基底のひとつに標準基底 $ \{\vec{e}_1,\vec{e}_2,\vec{e}_3\}$ がある. 個数は 3 個なので $ \dim(\mathbb{R}^3)=3$ となる. 次に次元 $ \dim(\mathbb{R}^3)=3$ と同じ個数のベクトル

$\displaystyle \vec{a}_1= \begin{bmatrix}1 \\ 1 \\ 1 \end{bmatrix},\quad \vec{a}...
...trix},\quad \vec{a}_3= \begin{bmatrix}0 \\ 0 \\ 1 \end{bmatrix} \in\mathbb{R}^3$    

を考える. これらを列ベクトルとする行列を $ A=\begin{bmatrix}
\vec{a}_1 & \vec{a}_2 & \vec{a}_3
\end{bmatrix}$ とおく. $ \mathrm{rank}\,(A)=3$ より $ A$ は正則となり, ベクトルの組 $ \{\vec{a}_1,\vec{a}_2,\vec{a}_3\}$ は 1 次独立である. このとき $ \{\vec{a}_1,\vec{a}_2,\vec{a}_3\}$ は基底となる. これを示す. $ \mathbb{R}^3$ の任意のベクトルは

$\displaystyle \vec{x}$ $\displaystyle = c_1\vec{e}_1+ c_2\vec{e}_2+ c_3\vec{e}_3= \begin{bmatrix}\vec{e...
...}c_1 \\ c_2 \\ c_3 \end{bmatrix} = E\vec{c} = AA^{-1}\vec{c} = A\vec{\tilde{c}}$    
  $\displaystyle = \begin{bmatrix}\vec{a}_1 & \vec{a}_2 & \vec{a}_3 \end{bmatrix} ...
...lde{\vec{c}} = \tilde{c}_1\vec{a}_1+ \tilde{c}_2\vec{a}_2+ \tilde{c}_3\vec{a}_3$    

と表される. ここで $ \vec{\tilde{c}}=A^{-1}\vec{c}$ とおいた. $ \tilde{c}_1=c_1$, $ \tilde{c}_2=-c_1+c_2$, $ \tilde{c}_3=-c_2+c_3$ は任意の実数となる. よって

$\displaystyle \mathbb{R}^3= \left\langle \vec{a}_1,\,\, \vec{a}_2,\,\, \vec{a}_3\right\rangle$    

が成り立つ. $ \{\vec{a}_1,\vec{a}_2,\vec{a}_3\}$ は 1 次独立であり $ \mathbb{R}^3$ を生成するので, $ \mathbb{R}^3$ の基底となる.

3.123 (ベクトルで張られる空間の次元)   $ \mathbb{R}[x]_2$ の基底のひとつに $ \{1,x,x^2\}$ がある. すなわち $ \{1,x,x^2\}$ は 1 次独立であり

$\displaystyle \mathbb{R}[x]_2= \left\langle 1,\,\, x,\,\, x^2 \right\rangle$    

が成り立つ. よって $ \dim(\mathbb{R}[x]_2)=3$ となる. 次に次元 $ \dim(\mathbb{R}[x]_2)=3$ と同じ個数のベクトル

$\displaystyle f_1=x+x^2, \quad f_2=1-x^2, \quad f_3=x$    

を考える. これらのベクトルは

$\displaystyle \left(f_1,\,\, f_2,\,\, f_3\right)= \left(1,\,\, x,\,\, x^2\right...
... & 0 \\ 1 & 0 & 1 \\ 1 & -1 & 0 \end{bmatrix} = \left(1,\,\, x,\,\, x^2\right)A$    

をみたす. $ \mathrm{rank}\,(A)=3$ であり $ A$ は正則であるので, ベクトルの組 $ \{f_1,f_2,f_3\}$ は 1 次独立となる. このとき $ \{f_1,f_2,f_3\}$ は基底となる. これを示す. $ \left(f_1,\,\,
f_2,\,\,
f_3\right)E=
\left(1,\,\,
x,\,\,
x^2\right)A$ に対して右から $ A^{-1}$ をかけると

$\displaystyle \left(1,\,\, x,\,\, x^2\right)= \left(f_1,\,\, f_2,\,\, f_3\right...
...\, f_3\right)\begin{bmatrix}1 & 0 & 1 \\ 1 & 0 & 0 \\ -1 & 1 & -1 \end{bmatrix}$    

が成り立つ. $ \mathbb{R}[x]_2$ の任意のベクトルは

$\displaystyle f$ $\displaystyle = c_0+c_1x+c_2x^2= \left(1,\,\, x,\,\, x^2\right)\begin{bmatrix}c...
...,\,\, x,\,\, x^2\right)\vec{c}= \left(f_1,\,\, f_2,\,\, f_3\right)A^{-1}\vec{c}$    
  $\displaystyle = \left(f_1,\,\, f_2,\,\, f_3\right)\tilde{\vec{c}} = \tilde{c}_0+\tilde{c}_1\,x+\tilde{c}_2\,x^2$    

となる. ここで $ \tilde{\vec{c}}=A^{-1}\vec{c}$ とおいた. $ \tilde{c}_1=c_0+c_2$, $ \tilde{c}_2=c_0$, $ \tilde{c}_3=-c_0+c_1-c_2$ は任意の実数であるから,

$\displaystyle \mathbb{R}[x]_2= \left\langle f_1,\,\, f_2,\,\, f_3 \right\rangle$    

が成り立つ. $ \{f_1,f_2,f_3\}$ は一次独立であり $ \mathbb{R}[x]_2$ を生成するので, $ \mathbb{R}[x]_2$ の基底となる.


平成20年2月2日