3.35 基底の変換
ベクトル空間の基底の取り方は一意ではないので, あるベクトル空間 に対して
が成り立つ. ここで , , , と , , , とは 異なる基底の組である. 片方の組を基底とみなせば片方は 1 次従属なベクトルであるから,
と書ける. ここで はある定数である. この関係式は
とも表される.
定義 3.140 (基底の変換行列) ベクトル空間 の基底 , , , と基底 , , , に対して
をみたす行列 を基底の変換行列という.
注意 3.141 (基底の変換行列) 数ベクトル空間( または )における 基底の変換は
とも表される.
注意 3.142 (基底の変換行列の正則性) , , と , , は 1 次独立であるから, 基底の変換行列 は正則である.
例 3.143 (基底の変換行列の具体例) において 標準基底 から 基底
への変換行列 を求める. は
をみたす.方法 1: まず,
とおくと
となる. よって
を得る.方法 2: または, は
をみたすので を得る.
定理 3.144 (基底の変換行列) ベクトル空間 において, 基底 , , から 基底 , , への 変換行列を とし, 基底 , , から 基底 , , への 変換行列を とする. このとき 基底 , , から 基底 , , への 変換行列 は
である.
(証明) まず,定義より
が成り立つ.これより
となるので を得る. よって となる.
例 3.145 (基底の変換行列の具体例) において基底
に対する基底
への変換行列 を求める. すなわち,
をみたす行列 を求める.方法 1: まず,標準基底 に対する 基底 と の変換行列を , とおく. すなわち,
が成立する. このとき
となるので より
を得る.方法 2: または, は
をみたすので より得られる.
平成20年2月2日