3.42 ベクトル空間の和
定義 3.177 (ベクトル空間の和) ベクトル空間 , に対して
をベクトル空間の和という. 特に,
のとき
と表記し,直和という.
注意 3.178 (直和) ベクトル空間 , , が
であるとする. このとき, のあるベクトル に対して,
をみたす , はただ一つ定まる.
定理 3.179 (ベクトル空間の和の次元) ベクトル空間 , , が
をみたすとき,
である.
をみたすとき,
である.
定理 3.180 (部分空間の共通部分) ベクトル
が 1 次独立であるとき, これらのベクトルで生成される空間
の共通部分は
となる.
(証明) と の任意のベクトルは
と表される. ここで, , ともに のベクトルとする. すなわち, とする. このとき,
を得る. これは の 1 次関係である. ベクトル , は 1 次独立なので 係数は
と自明なものに限る. よって共通のベクトルは零ベクトル に限る.
定理 3.181 (部分空間の共通部分) ベクトル
が 1 次独立であるとき, これらのベクトルで生成される空間
の共通部分は
となる.
定理 3.182 (ベクトル空間の和) 部分空間
に対して
が成り立つ.
(証明)
例 3.183 (ベクトル空間の和の具体例) のベクトル を 1 次独立とする. これらで生成される部分空間
を考える.
より,これらの和は
と表される.
例 3.184 (ベクトル空間の和の具体例) の部分空間で, を原点を通る直線, を平面とする. 直線 が原点以外で平面 と交わらないとき, であり,
が成り立つ. 直線 が平面 上にあるとき, であるので,
が成り立つ.
例 3.185 (ベクトル空間の和の具体例) の部分空間で, を原点を通る平面, を平面とする. であるとき と とが交わる点の集合は直線 となる. である. このとき,
が成り立つ. であるときは,
が成り立つ.
例 3.186 (ベクトル空間の和の具体例) の部分空間で, , を原点を通る直線とする. であるとき, であるから,
が成り立つ.
例 3.187 (ベクトル空間の和の具体例) の部分空間で, を原点を通る直線, を平面とする. , であり, であるから,
が成り立つ.
平成20年2月2日